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第5回 「自立循環型住宅」にお邪魔してきた!!

~自立循環型住宅~

「気候や敷地特性などの住宅の立地条件および住まい方に応じて極力自然エネルギーを活用した上で、建物と設備機器の設計や選択に注意を払うことによって、居住性や利便性の水準を向上させつつも、居住時のエネルギー消費量(二酸化炭素排出量)を2000年頃の標準的な住宅と比較して50%まで削減可能な、2010年時点までに十分実用化できる住宅である」(財団法人 建築環境・省エネルギー機構のガイドラインより)

最近「自立循環型住宅」という住宅建築が注目を浴びているらしい。立地条件や暮らし方に適した設計によって、自然エネルギーを有効に活用し、居住時のエネルギー消費量を少なく保つ住宅のことだが、具体的にはいったいどんなアイディアや工夫が凝らされた住宅なのだろうか? 百聞は一見に如かず! 横浜に新築ほやほやの「自立循環型住宅」があるということで、早速お邪魔してきた。

Oさん邸。柵や植栽、デッキはこれから設置される予定。デッキや植栽は放射熱を緩和する役割を果たす

JR東戸塚駅の丘の上にある閑静な住宅街、そこに目指すOさん邸はある。坪数は27坪なのだが、2階建ての室内は、中央のリビング部分が吹き抜けになっていてとても開放的だ。さらに吹き抜け部分の南側は一面窓になっていて、そこから光が燦々と差し込んでいる。

自然光が差し込む1階リビングと和室

設計を担当した建築家の井川一幸さんによれば、家の南側は道路に面しているものの丘の北側に位置している。そこで、自然光をできるだけ取り入れられるように、巨大な窓を吹き抜け部分に配置したそうだ。その一方で、格子の柵を庭に設けることでプライバシーに配慮。内部をすべて隠すのではなく外側からの視線を計算に入れて、侵入者が入りにくくするよう防犯にも対処した。

また2階や北側に効果的に設置された窓が、風の回流をつくることで夏の体感温度を下げる役割を果たしている。訪問したときはまだ完成していなかったが、庭には植栽とデッキが設置される予定だ。植栽やデッキは夏の放射熱を抑制する働きがあるという。

効果的に窓を配置することで室内の空気循環が活性化される(2階)

一方、冬の季節は、RCのコンクリート部分を温める電気蓄熱床暖房が威力を発揮する。床に通風口を設け窓から入り込む冬の冷気を床下に落とし込んだり、100mmの断熱材を使うことで、保温効果にも配慮しているそうだ。さらに屋根には太陽光パネルも設置されている。

窓の近くの床に設けられた通風口
冬には冷気を下に送り込む役割を果たす

オーナーのOさんご夫妻は、定年後の暮らしのため、2年前から住宅の新築を計画したという。一番の希望は、老後の暮らしのランニングコストを省エネによってできるだけ安くしたいということ。そこで建築家の井川さんは、この「自立循環型住宅」を提案したという。

電力消費効率の高い省エネ電球を採用

「二人暮らしということで、デッドスペースをつくらないことに注意しました。住宅は、大きければいいというものではないと思うんです。空気や光が行き渡るように設計することで省エネにもなるし、コミュニケーションも密になりますよね」

10年20年後にも発見のある住宅にしたいと語る井川さん

この間取りなら、1階にある台所と2階にある書斎で会話することも可能である。実はエコと団欒って、すごく親和性が高いものなのかもしれない。自分もいつかはこんな家に住みたいものです。と、まずはその前にコツコツ貯金せねば…。

今日のエコの芽
エコと団欒は親戚関係!
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それは現場で起きている。

プロフィール

小林ミノル

スタッフライター。1975年大晦日生まれ。30歳を過ぎ、エコの大切さに遅まきながら気づきはじめる。取材を通して、ニッポン企業の“縁の下の力持ち的”な環境対策を世に広めたいと考えている。