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関裕司の「サーチ・リテラシー」

検索の鉄人が、サーチの周辺事情とユニークなウェブビジネスを読み解く。

国立国会図書館「PORTA」がスタート

2007年10月18日

国立国会図書館が最近オープンさせたデジタルアーカイブポータルサイトが話題になっている。

国立国会図書館デジタルアーカイブポータル「PORTA」
http://porta.ndl.go.jp/

これは国立国会図書館が保有している蔵書目録、画像データや他の機関や民間のデジタルアーカイブを横断検索できるシステムである。現時点では20種のデジタルアーカイブがその対象となっている。アーカイブの種類が増えたのかもしれないが、これだけの機能ならPORTA以前にもできた。今回話題になっているのは次のような部分である。

  • メタデータを簡単に切り替えながらAmazonやGoogle等への引継ぎ検索が可能
  • 新着や更新されたコンテンツのRSS配信
  • キーワードランキングとアクセスランキング
  • 登録したユーザグループに応じた検索設定
  • 機能の構成要素やメニューの編集が可能
  • 簡易フィードリーダ
  • タグとコメントに対応したブックマーク
  • データプロバイダとの連携
  • PORTA自身がデータプロバイダとしてAPIを提供

特にブックマーク機能については、「みんなの」ブックマークから他のユーザのブックマークを参照できたりタグ一覧も見られるなど、ソーシャルブックマーク的な機能をもっている。タグ一覧はあちらこちらで見慣れたタグクラウド形式ではなく、表形式で整然と降順に並んでいるだけなのだが、正直に告白するとタグクラウドよりこちらの方がわかりやすい。

ログイン後のトップページにはおなじみの「○○さんようこそ!!」の表示と人型のアイコン(男子トイレの表示かと思った)があり、その下には曜日を知ること以外なんの機能もないカレンダーが表示されている。何やらSNS方面に行きたがっている匂いがしないでもない。それはそれで何か面白い可能性を秘めているかもしれないが。

第一印象は「これはすごい(かも)」ということになるのだが、やはりまだまだ一般向けとは言えないだろう。こんなこともできます、という機能が前面に出てしまって典型的なプロダクトアウト的なサービスになってしまっている。研究者や図書館員のようなプロにとっては、それぞれのデジタルアーカイブがどのようなデータを持っているのかを承知の上で検索するのだから、ワクワクしながら使えるサービスなのかもしれないが、我々一般人にとっては「近代デジタルライブラリーと貴重書画像データベースってどう違うの?」というレベルだから、クエリーに対して何が飛び出してくるものやら想像もつかないのだ。クエリーを打つ手が緊張してしまう。検索結果にも問題がある。多種多様なデータの横断検索を10件だけ見せられても、これがクエリーともっとも関連性のある10件だとはとても思えないし、次ページ以降に何が待っているのかもわからない。なんとも気持ちの悪い状態なのだ。

文句なしに褒める点もある。「資料ピックアップ」だ。ランダムで表示されるらしい画像は思わぬ出会いを演出してくれる。技術的には大したこともない機能だが、これが人気を支える重要な要素になるかもしれない。西原理恵子の連載漫画が読みたいという理由だけで毎日新聞をとる人もいるのだよ。

多少文句を言ってしまったが、それは愛すればこそ。私はこのサイトが好きだ。今後どのように改善、発展していくのか楽しみである。

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プロフィール

1963年生まれ。「検索の鉄人コンテスト」で優勝。40歳を過ぎて「ヤフー ジャパン」に転職。サーファー部の部長としてヤフー検索の精度向上の業務を日米共同で行う。現在はフリーで活動中。

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