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木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

やはりモバイルコミュニケーションは偉大だ!

2011年2月28日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 本日はいきなり意味不明なタイトルであるが、やはり「モバイル」を通じたコミュニケーションは社会に大きな影響を及ぼすものになっていると痛感している。「1人1台、しかもいつでも持ち歩かれているデバイス」であるケータイやスマートフォンによって、人々のコミュニケーションスタイルは大きく変わり、また先日のエジプトのように、こうしたコミュニケーションが政権をも覆している。

 私はもともと、道楽からケータイをコレクションし始め、あくまで道楽でケータイ関連の記事を書くなどしていたのだが、これが2000年についに本業となり(健康図書系出版社からアスキーへ転身)、さらに最近ではモバイルコミュニケーションの可能性について大学で講義などを展開するに至った。「きっかけは?」「なぜケータイに関心を持ち始めたのか?」などという質問をよく受け、そのたびに熱く語らせていただいてきたが、ちょうどとある取材でいい形で話をまとめてくださったので、ぜひこちらを参照いただきたい。

 さて、こうして社会に浸透したモバイルについて、多角的な視点から研究していこうという取り組みもある。私も10年以上前から「携帯電話研究家」なるいい加減な肩書きを使っているが、しかしこれはケータイが研究の対象となると信じていたからだ。かつては、一流大学の諸先生方から「ケータイのどこが研究対象になるのか?」と呆れられたものだったが、しかし近年はあらゆる学術分野でケータイをめぐる研究の取り組みが活発化している。

 日本は、いうまでもなくモバイル先進国である。そして世界のどの国よりもいち早くモバイルインターネットが普及を遂げた。こうした環境だからこそ、モバイル関連研究は世界の最先端を行く成果を出せるチャンスを秘めている。

 こんな思いを持った研究者が集まって生まれたのが、モバイル学会である。京都工芸繊維大学の田村博教授(当時)を中心に、日本人間工学会の分科会(モバイル人間工学研究部会)として、1998年から毎年「ケータイ・カーナビ」をテーマに、シンポジウムを開催してきた。田村博先生は、ヒューマンインターフェイスという考え方を広められたことでご著名な先生で、当時ケータイ端末のレビュー記事を書いていた私も、こうした考えに大きな影響を受けた。この研究部会が発展し、田村博先生を会長として2007年に組織されたのが特定非営利活動法人モバイル学会である。

 とても残念なことに、田村博先生は昨年夏に他界されたが、昨春名古屋大学で開催されたモバイル学会シンポジウム「モバイル'10」で締めくくりの特別講演をされ、その中でケータイのインターフェイスの進化の話に触れられた。

 「数字キー、文字キー、メニュー選択法など90年代は様々なインターフェイスが登場した。これに代わる新しいインターフェイスは何かと様々な議論を重ねていたが、今日になってみるとその答えはiPod/iPhoneであったと納得した。Jobs未だに健在なり」

 これが田村博先生のお話を伺う最後の時となってしまった。田村博先生はまた、「利潤を目的とする経済から、人との信頼を基礎とする経済へ」転向して行くべきと、ケータイサービスに触れながら説明されていた。ケータイのような人に身近なサービスこそ、利用者から真に信頼されるサービスであるべきということだ。確かに90年代のケータイサービスはとても私たちをワクワクさせてくれていた。ところが2000年を過ぎたあたりからのケータイサービスは、どうも利益追求に走りすぎているような気がしてならない。本当に、田村博先生には色々と学ばせていただいた。心からご冥福を祈りたい。

 そして新体制となったモバイル学会で初めてとなるシンポジウム「モバイル'11」が、来る3月10日(木)11日(金)の2日間、筑波大学で開催される。「安心なモバイル社会づくりへ」というテーマの下、3本の特別公開講演(参加費無料)のほか、8つのテーマで研究報告が行われる。学会というと敷居が高いイメージもあろうが、モバイル学会では「技術を提供する側と受け手の交わる場であり、学界、産業界、そして利用者が本音を語る場であり、また内外に開かれた交流の場であり、人と技術の調和を科学する場」として広く参加者を募っている。

 ちなみにNPOとして学会員の会費収入で学会運営を行っているが、まだ会員数も少なく、また企業等からの支援もほとんど無いため、学会運営はとても厳しい状態にある。モバイル関連研究をとりまとめ、その成果を世界へ広めていくためにも、ぜひ多くの皆様にモバイル学会シンポジウムに足を運んでいただき、モバイル関連研究の議論に参加していただきたいと願っている。(さらにモバイル関連企業様の支援も大歓迎です)

モバイル学会 シンポジウム「モバイル'11」開催概要

開催日時

2011年3月10日(木)12:50開会 / 2011年3月11日(金)16:20終了

会場

筑波大学第3エリア

参加費

会員・協賛学協会会員:12,000円 / 一般:18,000円

詳細はこちら

http://www.mobilergo.com/symposium/2011/index.html
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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

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