このサイトは、2011年6月まで http://wiredvision.jp/ で公開されていたWIRED VISIONのコンテンツをアーカイブとして公開しているサイトです。

木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

高校生による素晴らしいケータイ活用の取り組みに感涙

2011年5月23日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 米国でもティーンエイジャーがケータイのヘビーユーザー化しているというが、わが国ではすでにお馴染みなこと。こうした動向に、ケータイに非を唱える向きもあるが、むしろケータイは社会人になっては無くてはならないものであり、早い時期から安全に、そして有効に活用する術を身につけていくことのほうが重要と感じる。

 そんな中で、高校生によるケータイの自主的な活用法を集め、優れた事例を表彰するというイベント「ケータイ甲子園2010」の本選が、さる5月22日に大分市の大分全日空ホテルオアシスタワーで開催された。全国の30校、35チームからの応募の中から、書類審査による予選をくぐり抜けた10チームが集まり、20分の枠の中で熱のこもったプレゼンテーションが繰り広げられた。主催はケータイ甲子園実行委員会(実行委員長 堀部政男 一橋大学名誉教授)、共催は安心ネットづくり促進協議会および大分合同新聞社。また、内閣府・総務省・経済産業省などの後援により実現した。筆者は審査員として、このイベントに参加させていただいた。

 第1回目となる今大会で見事グランプリを射止めたのは、コミュニケーション部門では愛媛県から参戦した国立弓削商船高等専門学校のチームと、アート&サイエンス部門は北海道から参戦した北海道滝川高等学校のチーム。また、奈良県の奈良朱雀高等学校のチームが特別賞を受賞した。

 どのチームも素晴らしい取り組みを紹介してくださり、観戦にお越し下さった来場者の皆さんや、Twitter上からも感嘆の声が上がっていた。

 コミュニケーション部門でグランプリを受賞した国立弓削商船高等学校の取り組みは、通学や友達とのコミュニケーションにまだ慣れていない1年生同士が互いに連絡を取る手段として独自のSNSとメーリングリストを開設し、これを通学時などに有効に活用したというもの。

 弓削商船高校は瀬戸内海の弓削島にあり、また、ここに通学してくる生徒の多くも周辺に点在する島々に暮らし、海を渡って通学している。このため、長くなる通学時間の有効活用のために、生徒同士のコミュニケーション用のサイトを立ち上げた。メーリングリストはメールとして情報が残るというメリットから、日付や時間などの情報が加わる連絡等に有効活用するようになったほか、気象の影響を受けやすい通学時の交通機関の情報などを随時連絡する手段として、有効に活用するようになったという。また、SNS機能に関しては通学時や帰宅後の生徒同士のコミュニケーション手段として有効に活用、たとえば運動系クラブの大会前にSNSを通じてお互いに励まし合うことができ、SNSを通じてモチベーションを高め、集合後の試合に臨むことができた。また、今後はSNSを定期試験対策や日誌などに活用していきたいとしている。

 離島という環境下で、移動しながら離れた場所に居る友達同士でコミュニケーション手段としてケータイを活用しているということで、ケータイの特性をうまく活かしている点が評価された。

 一方、アート&サイエンス部門でグランプリを受賞した北海道滝川高等学校のチームは、美術部の部員によるケータイのシールデコレーション作品制作の取り組みを行った。

 ケータイを個性的に使いたい、あるいはケータイで個性をアピールしたいというニーズは多く、そのためケータイのデコレーションなどを行う専門ショップも存在する。北海道滝川高等学校のチームは、ケータイ主要機種の表面をPhotoshopを使ってトレースし、ケータイのデザインに合わせ表面に貼付けることのできるシール制作を試みた。そのシールには、部員各位が独自にデザインに創意工夫を凝らし、またそのデザインを待受画像と一体的に制作を行い、まるでケータイをキャンバスにしたようなアート作品に仕上げたのである。

 このほか奈良県から参戦した奈良朱雀高等学校は、リフォームをテーマにした某人気番組そっくりの仕立てにして、「日常的ビフォーアフター」というテーマで学内美化にケータイを活用した事例を紹介し、特別賞を受賞した。

 これはケータイのカメラ機能を活用し、生徒に自主的に校内の美化をカメラに記録してもらい、その取り組み前と後の写真を比較して優秀な清掃に表彰を与えるという取り組みを実施した。こうしてケータイを活用する以前は美化に対する生徒の認識も薄かったが、ケータイのカメラ機能を使って清掃前後の写真を記録し、これを校内で競わせることで、生徒の美化に対するモチベーションが格段に向上したと結んでいる。

 このほか入賞にもれたものの、出場した各校のケータイ有効活用は特筆すべきものばかりである。今回は割愛するが、また機会があればこうした有用なケータイの活用について、ぜひとも紹介したいと考えている。

ケータイ甲子園

フィードを登録する

前の記事

次の記事

木暮祐一の「ケータイ開国論II」

プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

過去の記事

月間アーカイブ