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木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

ネットワーク化社会都市指標のトップはシンガポール

2011年5月18日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 エリクソンは5月12日に、エリクソンと経営コンサルティング会社であるArthur D. Littleの共同研究である「ネットワーク化社会都市指標」について公表した。すでにWirelessWire Nwesにも概略が紹介されているが、今週に入ってから日本エリクソンより正式な日本語のプレスリリースも届いたので、ご紹介しておきたい。


出典:Ericsson

 この指標で上位にランキングされたのは、1位がシンガポール、2位がストックホルム、そして3位がソウルだった。これらの都市はICTに大規模な投資をすることにより、社会、経済、環境面での多くの目標を達成しているという。例えば、シンガポールは医療ICT(e-Health)におけるイノベーションに果敢に取り組んでおり、交通渋滞管理におけるパイオニアでもあるそうだ。また、ストックホルムはICTを共同研究や知識移転の主要な実現手段と見ており、一方ソウルはICTを利用して環境に優しいハイテクの実現を目指しているという。

 また、上位にランキングされた成熟した都市に対して、今後の活用が有望な都市としてはブラジルのサンパウロを評価している。特にモバイルの活用を評価しており、これまで通信インフラが不足していた地域に携帯電話等のコミュニケーション手段が入ってくることで、流通のコストを引き下げ、低所得層の市民の収入を増やすことに役立っているとしている。

 Arthur D. Little NordicのDirectorであるErik Almqvistは、「ネットワーク化社会の構築は人類が現在直面している大きな課題の一つ。この分析はICT投資と持続可能な開発の関連性を模索するための小さな最初の一歩に過ぎないが、この報告書が現状に満足していない都市にとってインスピレーションを与えるものとなることを願っている」
と結んでいる。

 東京はランキングで第7位。これを私たちは満足できる順位と捉えるか、それともErik Almqvist氏の言う「現状に満足していない都市」とみるか微妙なところだ。ただ、確かにシンガポールやソウルは私から見てもICTを有効活用している優れた都市だと感じるので(ストックホルムは残念ながら行ったことが無いのでノーコメント)、こうした都市の素晴らしいICT環境やICT投資、ビジョンや政策、市民のICTリテラシー向上のための施策などを参考にすべきだと考える。

 また、わが国では壊滅的な被害を受けた東北各地域の復興に際し「IT復興円卓会議」をはじめとして、政府主体に復興構想が練られているところであろうが、ぜひともこうした諸外国の先進的ネットワーク化社会都市をお手本にして、明確なビジョンに基づいた素晴らしい街へと生まれ変わるような、復興に期待したいものである。

レポートの原文はこちら(PDF)

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

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