このサイトは、2011年6月まで http://wiredvision.jp/ で公開されていたWIRED VISIONのコンテンツをアーカイブとして公開しているサイトです。

木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

モバイルの利活用で、高齢者の社会参加を促進させる!

2011年2月14日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 これまで韓国のICT事情、とくに電子書籍やデジタル教科書に関する話題に触れてきた。韓国は言うまでもなくブロードバンド先進国で、国民のあらゆる世代でインターネットの利活用が進んでいる。一方、わが国でもインターネットの利用率は年々高まっている。そんなインターネット利活用において、わが国ならではの特徴を見出そうとすれば、それは「モバイル先進国」であるという点であろう。

 Korea Internet & Security Agency が実施した韓国でのワイヤレス・インターネット利用動向調査によれば、ケータイによるインターネット、無線LAN、ブロードバンド無線インターネット(WCDMA/HSDPA、WiBroなどを通じたインターネット接続)のいずれか1つを1年以内に利用したユーザーは、2010年で59.3%だという。

 わが国では、同様な統計は無いが、総務省が毎年公表している通信利用動向調査から推計すると、2009年のインターネット利用者の人口普及率は78.0%、このインターネット利用における端末の種類を見ると85.1%がモバイル端末からのアクセスということなので、わが国の国民の66.3%がモバイルインターネットを利用していることが推計できる。韓国の普及率より高いことがご理解いただけよう。

 Facebookがきっかけでエジプトの政権が崩壊したばかりだが、インターネットが世論として社会に対して大きな力を持っていることは周知の事実である。もっと身近なところでも、インターネットを使いこなせるかどうかで、生活の豊かさは大きく変わってくる。何かモノを買う際に、インターネットを使えば価格比較が容易である。自分が得をしているのか、損をしたのか一目瞭然だ。さらにモバイルインターネットならいつでも思い立ったときに、インターネットへアクセスできる。こんな素晴らしい情報インフラの整備が行き届いているわが国なのだから、さらにより多くの方々に利用していただいて、ICT利活用のメリットを享受頂きたいものだ。

 なかでも、社会との接点が薄れがちな高齢者にケータイなどのモバイル端末を積極的に利用してもらうことで、高齢者の社会参加も促進できよう。こうした、シニアユーザーと技術や制度の専門家が情報を共有し、高齢者の社会参加を支援する今後の情報通信端末・サービスやその普及のあり方を考えていこうというシンポジウムが、きたる3月3日に開催される。

 主催はNPO法人コミュニティリンク、実行委員長は、東京電機大学教授、東京大学名誉教授の安田浩氏。シンポジウムの主テーマは、高齢者のICT利活用推進に向けた事例や議論なのだが、プログラムを見ると、やはり主役はモバイルインターネットであることが明白だ。高齢者にケータイやスマートフォンを活用していただくための全国各地の取り組み事例も紹介されるようだ。

 ケータイやモバイルインターネットの健全な利活用について関心をお持ちの皆様には、ぜひシンポジウムへの参加をお勧めしたい。開催概要は以下のとおりである。

「第1回 モバイルシニアネットシンポジウム」開催概要

日時・場所

 2011年3月3日(木) 13:30〜18:00(開場12:00)
 東京大学安田講堂(東京都文京区本郷7-3-1)

参加費

 無料(どなたでも参加可能)

主催

 NPO法人コミュニティリンク

後援

 東京大学高齢社会総合研究機構、電子情報通信学会、日本福祉介護情報学会

おもなプログラム

■モバイルシニアネットプロジェクト事業概要

 コミュニティリンク事務局長 中西雅幸氏
 シニアむけ「楽しいケータイ活用術」他、各教室の実践事例紹介

■講演&交流 インターネットが変革する医療、福祉、介護の世界(14:00〜)

 Aging in  Place(住み慣れた環境で老いること)を目指して
 講師 東京大学高齢社会総合研究機構教授 辻 哲夫氏
 老テク研究会 大島眞理子氏

■モバイルシニアネット活動先進事例発表

 (1)満員御礼! iPad無料体験会
  シニアSOHO三鷹 iPad研究会代表 山根明氏
 (2)大好評! Galaxy Tabと楽しむ鎌倉の春
  パソルーム代表 柴田和枝氏 
 (3)コミュニテイCafeでケータイ教室
  あびこ・シニア・ライフ・ネット理事長 佐々木敏夫氏
 (4)テレビでインターネット:ブラウザBOX
  きんきうぇぶ理事長 寺田美哉子氏

■シニアとインターネット調査報告

 (株)NTTデータ 第一公共システム事業本部 島田孝宜氏

■パネル討論 シニアはICTの何に困っているの?(15:55〜)

 パネリスト
  メロウ倶楽部幹事 若宮正子氏
  NTTドコモ プロダクト部第二商品企画担当部長 山口文久氏
  富士通 パーソナルマーケティング統括部長 大橋慎太郎氏(予定)
 コメンテーター
  高齢社会をよくする女性の会理事長 樋口恵子氏
  総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課長 谷脇康彦氏
 パネル討論コーディネーター
  介護福祉情報学会代表理事 高橋紘士氏

■電脳雛祭り(17:10〜18:00)

 講演 デジタルテレビの新しい楽しみ方
 講師 三菱電機京都製作所営業部長 福代 淳一氏

など

詳細・参加申込はこちら

フィードを登録する

前の記事

次の記事

木暮祐一の「ケータイ開国論II」

プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

過去の記事

月間アーカイブ