ケータイを活用した子ども向けワークショップに参加
2010年11月24日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら)
ケータイ利用の低年齢化が進む一方で、子どものケータイ利用の賛否も議論されるようになってきた。緊急時に連絡を取ることができるケータイの利便性には誰も異論を唱えないが、そのケータイ上で展開されるモバイルインターネット上のトラブルやメールのコミュニケーションがもたらす影響については、今後も安全な活用方法を議論していく必要があろう。
石川県では、小中学生にケータイをもたせないように保護者が努めるという規定などを含む「いしかわ子ども総合条例」が本年1月から施行されている。このようなケータイの規制を始めている地域は他にも少なからずある。たとえば広島県は、昨春より県内のすべての公立小中高校に「児童、生徒のケータイの校内持ち込みを校則で原則禁止」するよう、県教育委員会が通知を出している。
子どもたちのケータイ利用においては、確かに問題も無いわけではないが、「臭いものに蓋をする」やり方では解決にならない。もはやケータイは社会生活上無くてはならないインフラとなった。とくに社会人になれば、ケータイ所持は避けては通れない。だからこそ、安全に、そして有効に活用することを早いうちから考えていったほうが得策だと思うのだが、一部地域ではケータイそのものを「持つことが悪」というレッテルが貼られてしまっているのは、いささか行き過ぎのような気もする。
そんな広島県で、子どもたちが情報に振り回されないで、ケータイなどの情報ツールを活用する力を身に付けていくことを目指した講座とワークショップが開催された。主催したのは広島市のNPO子どもコミュニティネットひろしま。じつは筆者も基調講演とパネルディスカッションに登壇、参加させていただいた。
さらにこの講座の2日目には、子どもたちが参加したワークショップも開催された。このワークショップでは「伝言ゲーム」を題材に、言葉、手書きの絵、そしてケータイを使って、情報を伝えることを子どもたちが実際に体験するという内容だった。仕掛け人は、広島市のNPO子どもコミュニティネットひろしまに加え、福岡に本部を置くNPO子ども文化コミュニティ代表理事・高宮由美子氏と、福山大学人間文化学部メディア情報文化学科専任講師の飯田豊氏と杉本達應氏。メディア論研究、メディアリテラシー実践の第一人者たちだ。
まず子どもたちは、昔ながらの「伝言ゲーム」を体験。ここで、情報を正確に伝えることの難しさを知っていく。そして情報の伝達手段は、現代ではインターネットやメールといった、情報機器を活用したものが日常的となっている。そのため、情報機器を代表するものとしてケータイを活用、ゲーム形式(伝言ゲームというよりも、連想ゲーム的な使い方だった)で子どもたちにケータイを使ってもらい、遠隔で情報を伝えることの体験をしてもらった。
このワークショップに参加した約20名の子どもたちは、4つのグループに別れ、グループごとに1台のケータイを貸与。そして、各グループに、「海」「風」「波」「星」という漢字1文字を問題として提示し、他のグループあてにこれらの漢字を連想させるヒントとなる写真をケータイで撮影してメールで送り、早く回答を得られたチームが上がりとなるものだった。
筆者は「風」という課題を与えられたチームに同行させていただき、子どもたちと一緒に街に飛び出してみた。子どもたちの想像力はなかなかのもので、まず1枚目の画像は、パタパタと揺らぐノボリを見つけて撮影。なかなか揺らいでいるように見えず、何枚か撮影して、これを他グループにメール送信。でもこれだけでは「風」という回答が返って来ず、風をイメージするカットを探して商店街をしばらく放浪することに。
ヒントを他のグループに送りつつ、自分たちも別のチームから送られてくる連想ゲームを解かなくてはならない。「なんじゃこの写真は?」と覗き込む
全グループがそれぞれ回答を済ませ、再び会議室に集合。飯田豊氏による講評と、アドバイスが続いた。飯田氏は、「言葉や絵で伝えても、なかなか正しく伝わらないことがあるが、これがインターネットなどの情報メディアではますます難しくなる。これをみなさんに体験してもらいたかった。正しく伝えられる知識を身につけていくことも大切。一方で、インターネット上の情報をどう受け止めるかという能力を身につけることも必要」ということを子どもたちや保護者に分かりやすく説明してくれた。
ケータイを使ったワークショップということで、果たしてどのようにケータイを使うのか興味津々で参加させてもらった。なるほど、情報を伝えることの難しさを体験させ、メディアリテラシー向上につなげていったというわけである。
広島県では「ケータイ禁止を奨励する」講演会等には多数の聴講者が集まるそうだ。一方で、今回のような「ケータイを安全に利用する」ような趣旨でイベントを企画しても、ほとんど人が集まらない。本来であれば、ケータイ禁止議論を展開している方々にこそ聞いてもらいたい内容なのだが、まことに残念な限りだ。ケータイを安全に活用するための動きは、通信事業者でもさまざまな取り組みがある。とくにこれから期待されるべきは、今回の広島のように、地域のNPOなどと通信事業者が協力し合って、地道に市民に働きかけていくことなのであろう。全国規模では、通信事業者とNPOが手を組む事例も散見されるが、本当に通信事業者の支援を求めているのは、全国各地域で活動している地道なNPOなどだ。通信事業者各社にはぜひとも積極的に、こうした地域活動に目を向けてもらいたいものである。
木暮祐一の「ケータイ開国論II」
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