モバイルコンテンツのトレンドは「位置コミ」
2010年11月 9日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら)
ブログ、SNS、Twitter...、モバイルを通じたコミュニケーションのトレンドが、めまぐるしく移り変わっているが、このところのトレンドは"位置"+"コミュニティ"の「位置コミ」が来ているようだ。
じつは筆者もこうした「位置コミ」系サービスにはまりだしたところだ。当初は、foursquareを通じた「足あと」付けから始まった。すなわち、出張も多いので退屈しのぎにfoursquareで行った先に「チェックイン」することで、Twitterなどを通じて自分の居場所を発信していた。ある程度これを使ってくると、その地域の友人から声が掛かったり、思わぬ地域に密着した情報を得たりと、なかなか楽しめることを知っていった。
一方で、foursquareの課題は正式な日本語対応をしていないことだ。なので、iPhoneやスマートフォンユーザーではそれなりに利用者が多くても、一般のケータイユーザーにはあまり浸透していなかった。逆に、一般のケータイを使うユーザー層向けには、mixi等のSNSがこうしたロケーションコミュニケーション系の機能を取り入れ始め、現在の居場所を発信することも可能となっている。
スマートフォンとケータイの垣根なく、こうしたロケーションコミュニケーションを楽しめるサービスが望まれていたところだが、そんなところにNTTコミュニケーションズが「ロケティ」というサービスで切り込んできた。まだベータ版という位置づけだが、会員数は10万人を突破しているようだ。
早速、筆者も登録してみたが、一般のケータイはもちろんのこと、iPhoneでもHTMLベースだが利用可能なサービスとなっている(アプリ版の登場にも期待したい)。しかも当然、日本語で利用が可能なところはありがたい。登録も簡単だ。こうしたロケーションコミュニケーション系サービスのキモは、幅広いプラットフォームへの対応と、ロケーション内の情報の充実、そして会員数の獲得である。
ところで、せっかくの機会なのでモバイルサービス・コンテンツの傾向の変遷について解説しておこう。
かつて90年代は、ケータイの特徴といえば「いつでも、どこでも」利用できるという解釈が通例だった。携帯電話が一般の市場に浸透し始め、「電話を持ち歩ける」ことのメリットに多くのユーザーが新たな利便性を発見し、ケータイに共感して行くようになった。今となっては当たり前となった「どこでもコミュニケーションできること」に、筆者も限りない可能性を感じたものだった。
その後、1999年になるとケータイはインターネットにつながり、iモード等のコンテンツサービスが普及していった。こうしたモバイルコンテンツサービスにおいても、当初は「いつでも、どこでも」の発想で、様々なサービスがケータイ端末上に繰り広げられていった。従来のパソコン向けインターネットコンテンツとケータイコンテンツとは明確に目的が異なるもので、その設計思想として「いつでも、どこでも」という考え方はコンテンツサービスを企画する際の基本となっていた。
さらに、2000年代半ばあたりからは、こうした「いつでも、どこでも」使えるという発想に加え、さらに「そのとき、その場所で」利便性を発揮するコンテンツやサービス、機能の搭載が目立つようになっていった。モバイル機器の利用シーンを考えれば、本当に役に立つサービスは、モバイル環境(すなわち出先など)で、その時に欲しい情報をいかに簡単に、分かりやすく利用できるかがポイントとなる。たとえば経路検索や店舗探しなど、活用されているコンテンツの多くは「そのとき、その場所で」役立つコンテンツばかりのはずだ。
同時期にケータイGPS機能の搭載も標準化していくようになった。とはいえ、GPSを活用するコンテンツは、これまではナビゲーション系のサービスや位置情報を使った居場所確認など、ややニッチなサービスが中心だったのだが、わが国における位置情報を活用したゲームの古参ともいえる「コロニーな生活Plus」(略称:コロプラ)のブレイクや、iPhoneやスマートフォンなどの位置情報を活用したコミュニティの世界的ヒットなどを受けて、まさに今、新たなモバイルコンテンツの潮流である「位置コミ」が生まれたのだ。
本来、ケータイはコミュニケーションツールなので、コミュニケーション機能の活用は必然的なものとも言えるのだが、これに「位置情報」が加わることで、ネット上だけでなくリアル(現実空間)と連携したコンテンツが人気を博しだしたということであろう。
木暮祐一の「ケータイ開国論II」
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