併売店の活性化につなげたい、日本通信のSIM販売
2010年10月27日
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(CC) Photograph by くーさん
日本通信が、同社のSIMフリー端末向けのSIM製品を併売店網を通じて販売していくようだ。その第一弾としてトップワイジャパンとの代理店契約を締結したことを発表した。トップワイジャパンは都内で併売店の「パワーポケットショップ」チェーンを展開している。キャリアショップを含めると28店舗のケータイショップを展開する独立系代理店だ。
トップワイジャパンでは、iPhone 4のSIMフリー版と、日本通信の「talkingSIM」を取り扱う。これまでのケータイの購入と同じように、SIMフリー端末を店頭で回線契約と同時に購入できるようになる。これはわが国のケータイ史上でも画期的なことではなかろうか。大げさな表現かもしれないが、日本のケータイサービスのオープン化に向けた第一歩と言えるのではないか。
2007年秋の、総務省「モバイルビジネス活性化プラン」以降、ケータイの販売見直しなどが行われ、ご存知の通り端末価格が正常化していった(つまり高騰していった)。その分、基本使用料が引き下げられたので、ユーザーが負担するトータルのコストは従来と大きくは変わっていないはずだ。しかし、通信キャリア各社とも割賦販売を導入した上、料金施策上でも通信キャリアはユーザーの「縛り」を一層強くしてきた。基本使用料を安くしたといっても、2年の利用を前提にした割引施策として取り入れられ、うかつに短期で解約をしようものなら、1万円程度のペナルティを請求するプランとなった。2007年11月の端末価格が高騰したため、ケータイ端末の販売が落ち込んだと言われてきたが、価格が高騰した以上に、割賦販売や解約ペナルティの心理的要因がケータイの買い替えサイクルを伸ばしてしまった結果だと思う。
さらに、筆者が懸念してきたのが、ケータイ併売店の淘汰だ。割賦販売を導入した結果、ケータイの店頭価格は大半のモデルが「お持ち帰り価格0円」になってしまった。これでは、販売価格で勝負してきた併売店の強みが発揮できない。どこで買っても「お持ち帰り価格0円」ならば、ユーザーは当然見た目が信頼できるキャリアショップに足を運んでしまうだろう。案の定、2008年以降、併売店の淘汰が一気に加速していった。従来の併売店に示された選択肢は、キャリアショップに昇格するか、もしくは廃業を強いられたようなものだ。
本来、「モバイルビジネス活性化プラン」が目指したのは、従来のパッケージ型ともいえる通信キャリアがお膳立てした「端末とサービス、回線契約が一体になったケータイサービス」のほかに、ユーザーが「好みの端末やサービス、ネットワーク(回線契約)を自由に組み合わせられる」ものを選べるビジネス環境を生み出すことだった。併売店は、各通信キャリアの端末を一堂に取り揃え、ユーザーが「比べて選べる」店舗だったはずだ。本来であれば、こうした併売店がさらに活性化していくことで通信キャリアの比較もしやすくなる。ところが通信キャリアショップにおけるケータイの購入となると、結局「通信キャリアの比較」という選択肢はすでになく、通信キャリアがお膳立てした端末や関連商品を選ぶだけという閉じたケータイ選びになってしまう。
当然キャリアショップでは、店頭に並べられる商品から飾りつけに至るまで、徹底的に制約を受ける。並行輸入品のSIMフリー端末を売るなどといったことは到底できるはずがない。こうしてキャリアショップばかりになってしまうと、日本の「ケータイ鎖国」がますます強まるばかりだ。
1994年のお買い上げ制度開始以降、わが国のケータイ加入者数は年々倍々増の勢いで増加し、ケータイが一般社会に定着していった。このケータイ市場の拡大に大きく貢献してきたのが、地域に根ざした数多くの併売店の地道な努力によるものだったと言える。ところが2007年末以降のこの数年間は、いずれかの通信キャリアに忠誠を誓わないと生き残れないという、販売店にとって非常に苦しい時期が続いてきた。
しかしながら、来春のSIMロックの原則解除や、SIMフリー端末の並行輸入の活性化、さらに日本通信のようなMVNOによるSIMカード販売によって、ケータイ販売にまた新たな変化が出てくるに違いない。今回のトップワイジャパンと日本通信の提携を皮切りに、再び併売店網にスポットライトが当てられ、活性化していくことに大いに期待したいものだ。
木暮祐一の「ケータイ開国論II」
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