ケータイで女性の自立を促した「グラミンフォン」
2010年10月18日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら)
学生が私にお土産を買ってきてくれた。その学生は、途上国の支援に関心を持つ4年生。この夏休みを利用し、バングラデシュに行ってきたそうだ。そして、そのお土産というのが、バングラデシュの最大手キャリア・グラミンフォンの「端末」と「プリペイドSIMカード」だ。じつはグラミンフォンには以前から関心をもっており、バングラデシュに行くならぜひともグラミンフォンについて見てきてほしいとお願いしていたのだった。
3年ほど前に私は、『グラミンフォンという奇跡』(ニコラス・P・サリバン著、英治出版)という本を読んでいた。
バングラデシュはインド東側に隣接する国で、面積は日本の半分以下にも関わらず、人口は日本を上回る1億5千万人と、人口密度が高い国だ。そして、人口の半数が一日1ドル未満で暮らしていたというほど、アジアの中でもとりわけ貧しい国であった。戦争で荒廃したこの祖国の発展を夢見る起業家イクバル・カディーアが、バングラデシュでのケータイサービス立ち上げを考え、ただ一人、さまざまな企業や投資家にその夢を説いて回った。そして彼の夢に共鳴し、協力を申し出たのがグラミン銀行の総裁、ムハマド・ユヌス。さらに、ノルウェーの電話会社、米国の投資家、日本の総合商社など多くの人や企業を巻き込み、「グラミンフォン」は誕生した。
ケータイサービスが途上国にも立ち上がることは珍しくはなくなったが、グラミンフォンはそのビジネスモデルがユニークだった。当然、これほど貧しい国では一般の市民がケータイを買うことは困難を極める。そこで、グラミン銀行は女性の自立のためにケータイを購入させるための小額融資を行った。
もともとこの国では女性が自立するために、銀行で借金をして牛を買い、牛乳を搾って近所に売り、借入を返済し、牛を所有するということをしていたらしい。この「牛」を「ケータイ」に置き換えたのである。女性たちは借金をしてグラミンフォンを購入し、これを自分の村の公衆電話代わりに貸し(グラミンレディというらしい)、その通話料で借入を返済し、生計を立てたのである。
日本ではケータイ登場以前から十分な通信インフラが整えられていたので、ケータイには「どこでも電話できる」ぐらいのメリットしか感じない方がほとんどだろうが、バングラデシュのように電話そのものが整備されておらず、コミュニケーションを取るインフラが無かった地域にとっては、ケータイの存在はさぞかし大きいものだっただろう。
そんなグラミンフォンの誕生からすでに十数年、バングラデシュにこそ行ったことはないが、おそらくケータイの普及でコミュニケーションが円滑になったことで、国の経済は大きく発展したに違いない。お土産をもってきてくれた学生に「グラミンフォンを貸してくれるグラミンレディは見かけたか?」と問いかけてみるも、「そんなものもう居ませんよ。みんな普通にケータイ使ってますよ」ということだった。
さて、そのお土産だが、端末は中国ZTE製のA302。新品だが、価格は日本円にして1,500円程度だったそうだ。モノクロ液晶の廉価モデルなので、その程度の価格なのだろう。グラミンフォンのキャリアブランドだが、SIMロックは無いようだ。電源を入れると、いかにもアジアっぽい小気味いいオープニングトーンが鳴る。SMSは使えるようだ。
それにしても、こうした途上国などでケータイのインフラや端末で幅を利かせているのが中国のZTEや華為(Huawei)などのメーカーだ。アジア諸国やアフリカなどでかなりのシェアを取っていそうだ。中国本国ではスマートフォンなどのハイエンド端末もラインアップしているが、こうした途上国向けには量産効果で低価格で提供できるこうしたローエンド端末で一気にシェアを拡大しているのだろう。
華為は先月、Androidを搭載した低価格スマートフォン「Ideos」を発表し、北米や欧州、中南米、アジアの各市場に投入していくとしている。スマートフォンというとわが国ではどうしてもハイエンドモデルのイメージだが、今後はローエンドスマートフォンというか、OSこそAndroidなどのスマートフォンOSを搭載しながらも、機能も絞り低価格に抑えた端末が世界に普及していくのだろう。
木暮祐一の「ケータイ開国論II」
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