韓国のPC・ネットリテラシー
2010年9月27日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら)
韓国は、90年代終わり頃から、ブロードバンド普及率が世界一位だ。
筆者がアスキー在職中だった2001年頃にソウルを訪れた際も、一般世帯へのブロードバンド普及はもちろんのこと、街中の至る所にはPCバン(ネットカフェ)が軒を連ね、どこでもインターネットを利用することが可能な国だった。当時、日本ではブロードバンドを導入している世帯はまだわずか、という時代だった。
また、韓国ではインターネット利用可能なPCが公共機関などに標準的に備えられるようになり、街の中で無料でインターネットを利用する環境が順次整備されて行った。
たとえば、これは今回訪韓した際に見かけた地下鉄のホームやコンコースに設置されているPCの例だ。もちろん利用料は不要で、誰でもが無償でPCを利用できる。キーボード下には、SDカード等のメディアを挿入するポートも見える。いつでも使いたい時に、街中に公衆的なPCが設置されているのはとても便利だ。
ちなみに、筆者の韓国の知人たちのほぼ全てが、メールアドレスはYahoo!やHotmailなどのフリーメールを利用している。ウェブサイトは独自のドメインを使っていても、メールはフリーメールというケースばかりだ。というのは、こうした街中でPCを利用できる環境が整っているので、ブラウザを起動するだけで読み書きできるフリーメールのほうが便利なのだろう。
インフラとして、こうしたブロードバンド環境が整備されている韓国だからこそ、ネットを活用した各種サービスに関しても参考事例になるものが多い。とくに電子政府などの公共系サービスも非常に充実している。
たとえば「住民票」などは、ネット上で認証を通して、そのままプリントアウトするだけ。小学校〜高等学校の成績はデジタル化され政府が一元管理しているので、卒業証明書、成績証明書も電子政府サイトからいつでも取得できる。
ソウルの教育関係者から聞いた話だが、すでに韓国では小学校低学年でPCやインターネットを使いこなしており、SNSなどでネットを通じたコミュニケーションは小学校のうちに一通り体験し、ネット使いに馴染んでいるという。もちろん、ネットのフィルタリングや、アダルトサイトへのアクセスを監視する仕組みなども充実していることはいうまでもない。
じつは今回の訪韓の目的は、韓国のデジタル教科書の視察であったのだが、学校教育のICT化を推進できる背景には、こうした早い時期からのブロードバンドの普及や、子どものうちから日常的にPCを使いこなしているという生徒側の受け入れ環境が整っているからこそ、比較的スムーズに教育現場のICT化を推進できたのだろう。日本ではすんなりと行くとは思えない。
ブロードバンドやモバイルの活用は、やはり国によって使われ方や国民の考え方がずいぶんと異なるものだ。ICT関連施策を展望するのに韓国の事情を見て行くのは大変参考になるが、WirelessWire Newsでも新コーナーとして「世界のモバイルライフ」という企画が始まったようだ。
なお、韓国のデジタル教科書の動向については、次回以降触れて行きたい。
木暮祐一の「ケータイ開国論II」
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