気がつけばスマートフォン先進国となっていた韓国
2010年9月21日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら)
先週、久しぶりに韓国・ソウルを訪問してきた。4年ぶりの訪問である。
韓国は日本と同じように周囲を海に囲まれ、国境を陸路で越えることがないという点で、いわゆる「ガラパゴス」的現象が日本と同様に垣間みられる。しかも、財閥系の力が強く(各財閥系グループの中で、家電メーカー、百貨店、自動車メーカー、マンション開発などすべて揃っている)、日本よりも人口が少ない(約3分の1)ことでフットワークも軽いことから、日本であれこれ新しいサービスを考えている間に、韓国の方が先行して実現させてしまうことが多い。
したがって、日本の今後を展望するには、韓国で起こっていることを検証してみることで、およそ模範解答が見えてきたりする。
さて、久しぶりに訪れたソウルの街だが、やはり驚くことが多かった。まず、地下鉄の車内で見かけたユーザーが利用するケータイ端末の大半が、フルタッチパネルだったことだ。
車内をざっと見たところで、7〜8割のユーザーは、iPhoneやSAMSUNGのOMNIAやGALAXYなどのフルタッチタイプのスマートフォンを使用していた。スライドタイプや折りたたみタイプのケータイを使っているユーザーは2〜3割といったところだろうか。
とくに、地下鉄車内で音楽を聞いたり、DMB(デジタルマルチメディア放送、日本のワンセグに相当するもの)を視聴したり、あるいはTwitterやSNSを楽しんでいるユーザーはほぼフルタッチタイプの端末を使っており、スライドや折りたたみタイプのユーザーは、もっぱら「通話」が主体という感じだった(韓国では地下鉄全区間で、途切れること無くケータイやDMBの電波が入る)。明らかにデータARPUの高いユーザーはスマートフォンに移行し、データ系サービスに関心の無いユーザー層が、「電話タイプ」とでもいうべきスライドや折りたたみタイプのケータイを引き続き愛用しているといったところなのだろう。
ケータイショップ店頭のラインアップを見ると、フルタッチタイプのスマートフォンと、小型なスライドや折りたたみタイプのフィーチャーフォンがバランスよく並んでいるような状況だった。
わが国の今後のケータイラインアップは、ハイエンド端末はスマートフォンに移行し、スマートフォンのシェアは拡大、一方でハイエンド、ミドルレンジクラスのフィーチャーフォンは需要が減少し、逆に機能を最小限にとどめたローエンド端末の需要は拡大して行くものと考えている。世界でもそういう流れが出てきていると聞いていたが、韓国では"すでに"、そういったラインアップ構成で端末が整理されていることを確認できた。やはり韓国のモバイル事情は日本の今後を占う上で、大変参考になると痛感した。
韓国では、9月10日よりiPhone 4の出荷が開始され、また同日からSAMSUNGが「GALAXY Lounge」というSAMSUNGの最新スマートフォン「GALAXY」を体験できるスペースをオープンさせ、iPhone 4 vs GALAXY Sのスマートフォン一騎打ちのような様相を見せ、市場が非常に盛り上がっている印象を受けた。
今回、滞在が実質2日間の出張だったため、韓国のモバイルコンテンツ市場動向などの調査まで手が回らなかった。すでにスマートフォンが浸透している韓国においてモバイルコンテンツの利用傾向がどのように変化したかなど、知りたいことだらけのままの帰国となってしまったのが残念。
木暮祐一の「ケータイ開国論II」
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