タブレット端末が目指す、デジタル教科書戦略
2010年9月13日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら)
このところわが国においても、iPadに牽引される形で様々な情報端末の新製品が発表されている。サムスンはAndroid搭載のタブレットデバイス「Galaxy Tab」を正式に発表、東芝も同様にAndroid搭載タブレットを発表し10月にも英国で発売を予定しているそうだ。ソニーは電子書籍リーダーを国内にも投入することをアナウンスしているし、さらにAppleはiPod Touchの新製品を今月中にも発売するようだ。3G通信機能こそ搭載はされていないが、WiFi環境でビデオ通話機能が利用できる。
筆者は数年前から「ケータイ・モバイル端末は形状、利用目的共に多様化が加速する」ということを各所で論じてきた。国外に目を向ければ、すでに目的に応じた様々なモバイル端末が市販されていたが、国内では異様なまでに長年に渡って「折りたたみ型」か「スライド型」のケータイ端末ばかりが店頭ディスプレイを独占してきた。
端末が多様化していくには、これらが販売できる環境も必要であるし、通信インフラを使う以上、対応したネットワークや利用するための料金メニューなども必要になってくる。わが国の場合は、販売奨励金見直しによって「高価な端末を割賦で購入する」という買い方が定着してきた。また定額制パケット通信料も一般化し、端末が多様化していくための土壌は整いつつあると考える。
あとは、端末を利用する側であるユーザーにとって、利便性の高い、あるいは価値のあるコンテンツが、これらモバイル端末、タブレット端末で利用可能だということを積極的に訴求していけば、新たな市場は広がっていくものと信じたい。
さて、タブレット型端末が増えていきそうな中、こうした端末を電子書籍に、さらにはデジタル教科書に活用していこうという取り組みが世界に広まろうとしている。わが国でも以前から教育分野への情報通信技術の活用が謳われ、様々な取り組みや議論が行われてきたが、その中の一つのあり方として、「デジタル教科書をすべての小中学校へ配備する」という方向で動き始めている。すなわち、タブレット端末などが学校に配備され、教材・教科書などとして活用されていくということになろう。モバイル端末の多様化が進められていく中で、とくにタブレット端末が増え始めているのは、こうした政策をにらんでの動きなのかもしれない。
教科書のデジタル化については、教育関係者側からは反対の意見も聞こえてくるが、デジタルツールを活用されている各位なら、デジタルならではの教材としてのメリットも多々見出せるはずである。紙の教科書はそれはそれで価値はあるが、デジタル教材の併用で教育効果がより高められるのであれば、これを使わない手はない。
さらに、全ての小中学生がデジタル教科書・教材を持つ環境を整えること、および、そのための課題整理や政策提言、ハードウェア・ソフトウェアの開発、啓発活動を進めることを目的に、アップルやソニー、NEC、富士通、NTTドコモ、KDDI、セガ、出版社や新聞社、シンクタンクなど70社の企業が集まり、「デジタル教科書教材協議会」も発足している。
そのようなわけで、わが国のデジタル教科書はどのような方向に向かっていくのかを理解するための講演会『わが国におけるデジタル教科書の今後を展望する』を企画した。文部科学省「学校教育の情報化に関する懇談会」委員であり、また「デジタル教科書教材協議会」の発起人 / 副会長を務める、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏より、わが国のデジタル教科書への取り組みについてご講演いただく。また、わが国で一番最初にiPadの本格導入を発表した名古屋文理大学情報文化学部教授の長谷川聡氏にもご登壇いただき、iPadの教育活用の展望についてもご講演いただく。
お隣の韓国では、日本よりも早くデジタル教科書を政府主導で推進していくそうだ。すでに一部の学校では今秋より授業に取り入れていくという。そこで筆者は、来週にも新学期の始まった韓国の学校に出向き、教育の現場を取材してくる予定である。韓国の事情はこの連載でも報告していくほか、この講演会でも報告させていただく予定である。この講演会は一般参加も可能なので、ご関心をお持ちの皆様には、ぜひ足をお運びいただきたい。
講演会詳細
一般社団法人ブロードバンド推進協議会
新世代ブロードバンド研究会 第8回講演会
「わが国におけるデジタル教科書の今後を展望する」
http://www.bba.or.jp/bba/70/wg_1.html
木暮祐一の「ケータイ開国論II」
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