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木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

iPhone 4の並行輸入品が欲しい!

2010年9月 6日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 先週紹介した日本通信のmicroSIMがいよいよ出荷開始されたようだ。日本ではSIMカードだけ購入するというケースがこれまで一般的ではなかったが、今回のmicroSIM販売をきっかけに、少しでも一般のユーザー向けに認知されていくことを願いたい。

 一方、端末に至っても、「回線契約無しで端末のみ購入する」ということがこれまで一般的ではなかった。一般的なユーザーは、携帯電話を購入する際には必ず店頭で身分証明書を提示し、回線契約の手続きが発生することが「常識」と認識している。世界では、携帯電話は家電品と同様に、レジでお金を払うだけで持って帰ることが可能なものだが、こうした話をしてもピンと来ないのである(もちろん、日本と同様にSIMロックされた安価な携帯電話を回線契約と同時に購入するという方法もある)。

 日本通信のようにSIMカード単体を積極的に供給してくれる通信事業者が登場した以上、ぜひとも携帯電話単体を販売する販売店が増えていくことにも期待したいものである。すでに日本通信のSIMカードの利用を推奨した、iPhone 4の並行輸入業者も増えているようだ。インターネットで検索すると、すでにiPhone 4のSIMフリー版を販売している業者を多数見かける。輸入車やブランド品にも並行輸入品があるが、日本ではどういうわけか「並行もの」というとグレーなイメージが付きまといがちである。とくに携帯電話の場合は、端末の認定・検定の問題もあり、合法的に利用できないケースもあって、並行輸入業者はごく限られた存在であった。

 しかし、iPhoneの場合は、国内で正式に認定・検定を通したソフトバンクモバイルが売る正規品のほかにも、海外で販売されているiPhoneでも端末画面上に日本の認定・検定の証明が表示される。総務省でも、一部規約見直しが行われ(画面上の表示で良しとした)、これら海外販売品のiPhoneを堂々と国内で利用することが可能となった。

 こうした流れの中で、iPhoneやiPadを並行輸入し販売する業者が増えていくのではないかと、少々期待している。

 写真は、本年4月に香港を訪れた際に撮影した、電気店店頭のスナップだ。この頃、アメリカでは世界に先駆けiPadを発売し、話題になっていた。香港ではこうした商品をいち早く輸入し、我先にと店頭に並べているショップが山ほどあった。もちろん日本も香港も、この時期ではまだiPadは正式に販売はされていなかった頃である。にもかかわらず、香港の街を歩くと街角の至る所でこのようにiPadの在庫をアピールしているショップを見かけたのである。

 一方、同時期にわが国でもiPadを並行輸入する業者は存在したようだが、少なくとも香港のように店頭で実機を見かけることは無かった。その背景には、並行輸入がアングラだという意識のみならず、通信を伴う端末は通信事業者で契約を伴って購入するものという消費者側の認識の強さから、並行輸入業者のモチベーションが高められなかったことが影響しているのだろう。

 iPhone人気に端を発し、さらに今回の日本通信によるSIMカード販売、そしてSIMロックの無いiPhone 4へのニーズの高まりから端末のみの並行輸入販売、という新しい流れが一般の消費者にも少しずつ認知されるようになってきた。地道ではあるが、端末と回線を別々に購入するという、わが国では認知されてこなかった選択肢が、ようやく日の目を浴びるようになるのではないか。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

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