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木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

iPadを教育現場でどのように活用していくべきか

2010年7月27日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 このほど、私の勤務する大学にて、来年度の新入生にiPadを貸与し、教育や学内コミュニケーションに活用して行くという報道発表をさせていただいた。ITmediaなどがニュースとして取り扱ってくださり、各ウェブ媒体などで話題になったようだ。

 iPadを導入する大学としては、すでに名古屋文理大学、名古屋商科大学、大谷大学などが名乗りを上げている。また、青山学院大学社会情報学部を皮切りに、iPhoneを学習ツールとして導入した大学もすでに数が多く、iPhoneやiPadを教育機関で活用するための各種ソリューションも充実しつつある。

 こうしたツールが本当に効果的なのかなど、今後慎重な検証も必要と思われるが、何よりこれらの新しいデバイスに慣れ親しみ、社会人になったときにすぐに活用できる知識や経験を身につけておくことは、学生にとってはこの上も無い体験になると考えている。私の大学自体は、もともと文系の学部(国際コミュニケーション学部)でもあり、コンピュータの利活用能力にばらつきが多かった。仮にiPadなら、日ごろコンピュータに触ったことが無い学生から、プログラミングまでこなす学生に至るまで、スキルに応じて色々な活用方法を編み出してくれると考えた。

 もちろん電子教科書としても活用していくことになろうが、そうした教科書的な活用方法よりも、むしろノート代わりに活用させたり、さらには社会人として常識的な「メールやネットの利活用」など、現代社会に準じたメディアリテラシーを身につけさせることのほうが重要なのであろうと考えている。

 従来であれば「ノートパソコンを使え」というのが世の流れだったが、iPadならiPhone並みに電池が持つし、すぐに起動させメモを取ったり、調べたり、メールができる。もちろんクラウド連携もばっちりであろう。また、これから大学に入学してくる学生たちが社会人として巣立つ頃には、LTEなどの、より高速なモバイルネットワークが張り巡らされ、モバイル端末の果たす役割はますます重要になっていくはず。そうした時代に即戦力として活躍できる学生を送り出して行くためにも、iPadなどのモバイル端末の活用経験は必ず役に立って行くと考えるのである。

 ちなみに私のゼミでは、先行して今秋からゼミ生全員にiPadを貸与し、本学におけるiPadの本格活用に向けたコンテンツ作りに協力してもらおうと思っている。(本学のiPad導入に関する報道でメディアに露出していた学生たちが私のゼミ生たちである)

 先だって日韓ITジャーナリストの趙章恩氏に大学までお越し頂き、このゼミ生向けに特別講演を実施していただいた。韓国のモバイル最新事情をご教示くださったが、とくに韓国では政府主導で電子教科書の導入を図って行くそうで、一部の学校等では今秋の新学期から電子教科書の運用が始まるのだそうだ。そしていずれ全ての小学校、中学校、高校ではデジタル端末を通じた電子教科書の利用が推進されていく。

 趙氏いわく、電子教科書、eラーニングといった使い方だけでなく、さらには全国一律の学力テストなどもこのデジタル端末を通じて受験するようになるだろうという。ということは、その果てに考えられることは…、おそらく大学の入学試験なども不要になるのだろう。国民番号と紐づいて小学校からの学力試験の成績が政府のデータベースに記録されていくので、大学入試となれば希望大学にネットからエントリーするだけで合否が返ってくる、なんて時代も訪れるのかもしれない。お隣韓国の電子教科書事情の行方に注目していきたいところだ。

 なお、来年度入学生のiPadは大学側で用意するものだが、今秋からの私のゼミ生向けのiPadは、私の個人研究費から捻出することになっている。できたばかりの新設ゼミなので、外部資金にも乏しく、研究室財政は極めて困窮している。従いまして、iPadの教育機関での活用に関して、アイデアや、共同研究、共同開発のご提案、さらにそうした活動に伴う研究費支援など、心からお待ちしております!

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

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