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木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

iPhone並みのヒット端末が、わが国から生まれないのはなぜ?

2010年6月28日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 iPhone 4が、ついに6月24日から発売開始された。わが国ではソフトバンクモバイルが6月15日からiPhone 4の予約受付を開始したものの、18日には受付を打ち切るほど予約が殺到したようだ。ところが、その予約したユーザー全員に端末が割り当てられていない上、当日販売も行われたことで、販売店店頭ではかなりの混乱をきたしていたようだ。

 筆者は、前回のiPadで予約に失敗し、発売日に入手するのに苦心した反省から、今回はしっかりと早めの予約を心がけたので、なんとかiPhone 4を入手することができた。購入にあたっては、長年お世話になっているソフトバンクショップで予約から手続きまでお願いしたのだが、そこで若干ではあるがその苦労話も伺えた。

 今回のiPhone 4発売で槍玉に挙がっているのが、予約販売分に端末を回せないにも関わらず、当日販売を行っている点だ。予約は完了しながらも、発売日に入荷分から漏れてしまって入手できなかったユーザーにとっては、心穏やかではないはずだ。孫正義社長は「99%以上を予約者に優先販売し、残りの1%未満を当日販売分とした」ことを述べているが、ショップ店頭ではクレームを付ける顧客ばかりで、見ていてあまりに気の毒だった。

 契約時にそれとなく、そのショップの受付担当者から聞いた話であるが、そのショップでは約300件の予約を受け付けていたものの、最終的なiPhone 4の入荷数は70台だったそうだ。それも、前日の夜になってこの入荷数が判明したため、予約を入れてくださった顧客に対し、徹夜対応で出荷不能の連絡などをしていたようだった。

 ただ、そのショップの説明では、孫正義社長の説明のとおり「全ての販売店への配分は、予約数量に対して比例配分した」そうで、そう考えると、予約したユーザーの7〜8割の方が発売日当日の入手を諦めざるを得なかったという計算になる。いずれにしても、iPhone 4は予想を超える人気だったということだろう。

 iPhone3G発売時における盛り上がりにも驚かされたが、1機種の携帯電話端末の発売で、これほどのドラマが繰り広げられたケースはわが国では皆無だった。逆に考えれば、日本の端末メーカー、そして各通信事業者の商品企画担当者は、なぜiPhoneのようなヒット端末を生み出せないのか、今一度考えてみるべきだろう。

 iPhoneは別に高機能な携帯電話ではない。カメラの画素数も、ディスプレイの解像度も、日本製の携帯電話のほうが遥か以前から勝っていたはずだ。さらにおサイフケータイやワンセグなど、自慢できる機能だってあったはず。ところが、わが国の携帯電話端末でiPhone並みに話題になったモデルは皆無に等しい。まことに残念な限りだ。

 また、わが国では携帯電話端末1機種のライフサイクルも短すぎる。端末は、もはや通信事業者のサービスをユーザーに使わせるための「顧客獲得ツール」でしかない。なので端末メーカーも熱を込められないし、ユーザーも面白みを感じなくなってしまった。わが国の端末メーカー、そして通信事業者の商品企画担当者は、「iPhoneに学べ、続け」どころの話ではなく、むしろ「iPhoneを見て反省すべき」ことが山ほどあることに早く気付くべきだ。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

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