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木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

iPad発売、「誰でも気軽にインターネット」の時代が到来するか

2010年5月31日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 先週末、いよいよわが国でもアップルのiPadが発売開始され、各所でiPadに関する話題が事欠かないようだ。

 筆者はiPad発売当日、熊本へ出張の予定があったため、仕事を終えた後に現地の量販店で購入することを心に決めていた。正直なところ、事前予約もしていなかったので、当日入手できるかどうか不安ではあった。ところが、熊本市内でiPadを取り扱った2店のうちの1店で、かろうじて在庫の残りを購入することができた。購入した端末はWiFi+3Gの32GB版モデルだ。16GBでも十分なのだが、それは売切れ。また、携帯電話コレクターでもある筆者としては、3G通信は必須条件。やはりアンテナマークが画面上にないと落ち着かないのだ(笑)。

 私が購入した熊本市内の量販店では、iPad受付用の特設テーブルを用意し、手際よく来客をさばいていた。とくに大きな行列にはなっていなかったが、iPadを求める顧客はひっきりなしに訪れ、iPad展示スペースも常時人だかりができていた。この地でもiPadの関心は高いようだ。

iPad発売日当日、熊本市内の量販店にてのスナップ

 一方、東京では表参道のソフトバンクショップや、銀座のアップルストアに大行列ができたようだ。さらに当日から翌日にかけての主要ニュースメディアは、こぞってiPad発売に関する特集を組んでいた。世の中はiPadの話題で持ちきりという感じの週末だった。

 iPhoneやiPadが、なぜこれほど人気があり、そして話題になるのだろう。WirelessWire Newsに、ジャーナリストの林信行氏によるiPadについてインタビュー記事が掲載されているが、iPhoneやiPadがどうしてこれほど話題になるのかについて核心に迫った解説がなされていて、大変参考になる。詳細は林信行氏インタビュー記事に譲るとして、ここでは筆者なりにiPadを手にして感じたことを記しておきたい。

 林信行氏も述べられているが、私たちは携帯電話とかPCといった既存のデバイスについて、「こういう形が当たり前」という固定概念が植えつけられてしまっていて、新しい発想の製品を長らく生み出せていなかったのではないかと思う。改めてiPadを手にしてみると、「PCって、これで十分じゃないか」と思えてくるし、「どうしてこういった製品がなかったのだろう」とため息が出てくるのである。

 もちろん、日ごろ仕事に活用しているノートPCに比べれば、iPadでできることに制約は多いし、PCでこなしている仕事のすべてをiPadで置き換えられるものではない。しかしながら、リビングで寝転びながら傍らでウェブサイトを閲覧したり、メールを眺めるぐらいであれば、これほど気軽な端末はない。起動させる手間暇もかからないし、なにしろかさばらないところがいい。

 PCとiPadを使い分けられるユーザー層にはもちろんのこと、このiPadはこれまでコンピュータに縁が無かった世代にまで、インターネットやメールの便利さを広げてくれるのだろうという確信も持てた。iPadを使えば、高齢者や子どもでも、気軽にインターネットやメールが使えるようになるに違いない。

 従来、スマートフォンというのはとても敷居が高くて、ヘビーユーザーが使う特殊なものと考えられていたが、iPhoneがこれを覆してくれた。同様に、PCはどうにも敷居が高いと考えていたユーザー層にiPadが浸透していき、これまで以上に幅広い世代層に向けて、インターネットの活用が促進されていくのではないかと感じるのである。iPadによって、世界におけるインターネットの活用がどういうふうに変化していくのか、ユーザー動向を注視していきたいと思う。

さっそくiPadアプリを色々と試しているが、一番感激したのが「元素図鑑 The Elements in Japanese」(Element Collection/1,600円)。紙の教科書で実現できなかった表現がiPadでは可能になる。もしかしたらiPadで「教育」も変わっていくかもしれない。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

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