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木暮祐一の「ケータイ開国論II」

通信事業者のための情報サイト「WirelessWire News」から話題をピックアップし、モバイルサービス業界を展望する。

中国から学ぶ日本ケータイの常識・非常識(2)〜SIMカードはテレカ感覚

2010年5月10日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら

 SIMロック解除議論が花盛りなわが国であるが、海外、とくに中国・香港あたりでは、SIMカードに対する認識がわが国とはかなり異なる。

 以前、国内のとある通信キャリアのショップ店頭で、SIMカードだけの契約を試みたが、あっさり「そんな販売の仕方はない」と断られてしまった。インセンティブ販売が基本であるわが国では、端末と回線をセットで売らない限り、販売店に利益が出ないのだろう。そうした中、NTTドコモがSIMカードだけ販売するという意向を示したことは、わが国において大きな変化の兆しが出てきたと評価すべきことなのかもしれない(結局、iPad取扱はソフトバンクモバイルになったが)。

 一方、世界では、SIMカードはさながら「テレホンカード」の感覚だ。とくに、中国・香港ではプリペイド支払いのほうが主体であり、安価に販売されるプリペイド式のSIMカードがあれば、直ちに乗り換えてしまう。当然、端末にはSIMロックなどないから、通信事業者が変わろうが関係ない。

 あるいは、利用目的に応じてSIMカードを差し替えて利用するケースもある。たとえば音声通話用とデータ通信用で、それぞれSIMカード(回線契約)を使い分ける場合などだ。そのほうがお得なケースがあるのだろう。

 こういうことを書いていると、「そんな面倒な使い方をするのは、あなたの様なケータイオタクぐらいだろう」と指摘を受けそうだが、海外では一般のユーザーにも浸透しているようだ。以下の写真は、先日香港を訪問した際のスナップである。

 これは、プリペイド式のSIMカードを販売する露店の軒先での光景。そして、香港の女子高生たちが手にしているのは、「3(スリー)」という通信事業者のプリペイドSIMカードだ。SIMカードには「日本韓国ローミング対応」と書いてある。

 おそらく、これから修学旅行などで日本あるいは韓国などを訪問するのかもしれない。日ごろ使っているSIMカードは香港内専用のものなので、韓国あるいは日本に渡航した際にも使えるSIMカードを探していたのだろう。

 そして、このSIMカードを購入していった。もちろん、プリペイド式なので、身分確認も要らない。お金を支払えばそのままSIMカードを持ち帰れるのである。店頭に並ぶSIMカードの種類の多さにも注目いただきたい。世界ではこのように、SIMカードといえばテレホンカードぐらいの感覚で、自分のケータイに差し替えて使うものなのだろう。

 そして私も同じSIMカードを1枚購入して帰ったことは言うまでもない。

オマケ:プリペイドSIMカードを売る横で、中古のケータイ端末も販売中。つまり、今すぐケータイを使いたいという緊急事態に、こうしたSIMカードと中古端末を売る露店で対応できるというわけだ。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

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