石油供給:日本はアメリカ以上に危機的
2008年7月13日
石油の補給線がいかに細い糸のようなものかを、世界の石油供給、5大「急所」−−「攻撃されれば国際経済が危機に」が明らかにしている。「世界が大変なことになるんだなあ」というのは、あまりにのんびりした認識だ。実は最初に、それも一番影響を受けるのが日本だからである。
ただ、この記事に取り上げられている「急所」の全てが日本に直接影響を与えるわけではない。日本は重油での輸入が多いので、精製施設は直接は大きな影響を持たない。日本の石油のアキレス腱は、ズバリホルムズ海峡とマラッカ海峡だ。
統計によって差があるが、日本に輸入される原油の80%がホルムズ海峡を、85%がマラッカ海峡を通って運ばれてくるからだ。ホルムズ海峡を通過する原油の25%、マラッカ海峡に至っては40%が日本向けだ。何しろ日本は原油のほぼ全量を輸入に頼っている上に、その90%近くを中東に依存している。原油だけでなく、LNGやLPガスの中東依存度も高い。
だから、大きな油田がテロに遭っても大きな影響を受けるのが今の日本の現状だ。しかし海峡が封鎖されれば日本は直接的に影響を受けるし、世界経済にも影響が派生する。また日本に直接影響が無い「急所」が狙われても然りだ。ただ、実際にはそう危機をあおる必要も無い。マラッカ海峡には今も盛んに海賊が出没しているし、事故もあればテロの危険もあることは関係者は重々承知している。だからシーレーン防衛が話題になることもあるわけだ。
アメリカが中東からインド洋に第5艦隊を、太平洋に第3艦隊と第7艦隊を配置し、多数の空母戦闘群を機動的に配備しているのも、海の動脈を守るために他ならない。しかし本質的には、軍事力によるよりも世界各国との関係強化や平和活動によってエネルギーを確保する方が、世界の総コストは低くなる。日本は半年分近いエネルギーの備蓄を行うことで、輸入途絶などの影響を受けにくくしているが、外交活動によっても安全性は上がる。
最後に、石油の輸送路となっているシーレーンの重要性は、実は経済的なものであることを忘れないようにしよう。ある地域や輸送を押さえられることは軍事的には決定的な意味を持つことがあるが、経済的にはあくまで相対的なものでしかない。なぜなら、輸送路は迂回することも出来るし、代替エネルギーの利用量を増やすことも出来るからだ。備蓄を使いながら問題が解決するのを待つことも出来る。最近ガソリンが急騰したわけだが、すぐに日本が沈没するわけでもない。調整が必要かもしれないが、結果的に競争力が強化されることも良くある話だ。関心がある人は、資源エネルギー庁の資料や、シーレーンに関する研究などを参照のこと。
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