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合原亮一の「科学と技術の将来展望」

Wiredの記事を中心にウォッチしながら、科学・技術とその将来を考える。

火星に生命が存在する可能性は高い

2008年8月 5日

ワイアードビジョンは火星探査機『Phoenix(フェニックス)』に関する一連の記事を提供している。最新の記事では、Phoenixが火星での生命存在を発見したのではないかという噂が飛び交っている状況を伝えている。

僕個人としては、この問題は2005年にほぼ決着がついたと考えている。ワイアードビジョンの過去の記事、火星に生命の可能性あり−−大量のホルムアルデヒドにあるように、火星の大気が物理現象だけでは説明できない状態を維持しているからだ。

今回Phoenixには生命を直接確認するための装置が積まれていないとされているが、直接確認する以外にも生命探査の方法があるからだ。実はジェームズ・ラブロックのガイア仮説は、NASAの火星生命探査計画の中から生み出されたものだ。生命は単独では存在できないため、惑星の地表に生命の連鎖を作り出す。その活動が地表の環境に、生命が存在しない物理的環境とは違った恒常性を与える、というのがガイア仮説だ。

つまり惑星の地表の環境に、生命が存在すると仮定しなければ説明できない状態が観測されれば、生命の存在が確認できることになる。2005年のホルムアルデヒドの発見は生命存在の可能性が高いことを意味している。もちろんガイア仮説には反論もあるし、実際に大量のホルムアルデヒドが存在しているかの確認も、それが生命存在以外に本当に説明できないかの確認も必要だ。

もし現在確認される火星生命が微生物だけだったとしても、過去により高い知性を持つ生命が存在した可能性は充分ある。火星生命の歴史を辿ることは、地球生命の起源や将来に大きな示唆をもたらす可能性がある。火星の生命存在が直接確認されれば、火星探査の大ブームが到来するだろう。それはわれわれに何をもたらすのだろうか。

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プロフィール

ワイアードビジョン取締役で米Wired.comの翻訳を担当しているガリレオCEOも務める。身近な技術から未来技術まで、広範な関心を持ち、ちょっとしたエンジンや電気製品なら自分で修理したがるので周りの人は困っている。