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藤元健太郎の「フロントライン・ビズ」

コンサルタントとしての豊富な経験をもとに、ITビジネスの最先端の動向を、根本から捉え直す。

第7回 シチュエーションにあわせて携帯も変えたい!

2007年9月27日

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以前も触れたがDoCoMoが新しく始めた2in1サービスは非常に面白いサービスである。一台の携帯で違う電話番号とメールアドレスが持てるサービスで、まさに2つの異なる人格をマルチパーソナリティとして使い分けることができる。一番多いのはビジネスとプライベートであろうが、女性などは、とりあえず教える人達用と本当に仲の良い人達用などに分けるのも便利だろう。以前は、家の電話と会社の電話とで別れていたため、自分のパーソナリティの時間とか場所での違いを特に意識する必要はなかったが、現在では携帯にかかってくる相手で瞬時に判断し、声のトーンから話す内容まで考える必要があり、まさに瞬時の人格チェンジが求められていると言えるだろう。

このように携帯はマルチパーソナリティを実現するアイテムとして今後も非常に重要であるが、そこで是非実現して欲しいのが一人複数台の所有を認めるサービスである。現在の端末は、SIMロックという端末と個人の契約を結びつけてしまう方法がとられているために、端末を買い換える期間などに制約がついている。それは携帯電話会社が端末販売に相当な金額を補助して、端末価格を抑えているためでもある。

しかし、すでにFOMAなどの日本の3G携帯ではUIMカードというものを差し替えると同じキャリア同士の3G携帯であれば利用が可能なようになっている。そこで携帯端末を契約とは別に自由に購入することができるようになれば、一人で複数の携帯を利用することがもっと自由になる。現在でもメガネや時計はすでにシチュエーションによって変えることが当たり前になっている。しかし携帯だけはなかなか変えることができないためについついオールマイティなものを選ぶことになってしまう。

もし自由に切り替えられるのであれば、パーティ用にドレスアップした携帯、アウトドア用にヘビーデューティな携帯など機能とデザインを自由な感覚で考えて携帯を使い分けるようになるだろう。当然そうなればコレクターが増えて、古い携帯はビンテージ携帯として、時々古い機種を利用しては悦に入るようなマニアも登場するかもしれない。

また現在はストラップや一部のカスタムジャケットなどをカスタマイズすることで個人のアイデンティティを演出することが多い携帯であるが、複数端末になれば現在のPCのように自作携帯という市場も登場するかも知れない。何よりも人に見せびらかして自慢するにはもってこいのプロダクトであるため、様々な材質やデザインなどに挑戦できることでクリエイティブ心をくすぐられる人も多いのではないだろうか。秋葉原に自作携帯ショップができるのは想像するだけで楽しい。

2in1も別モードはWebメールの利用だったりするが、すでにセキュリティ対策も意識してローカルに住所録、メールなどの個人情報を残さないというのも一つの方向であり、基本的なデータ類がネットワーク上にのっていくことで、ますます携帯端末側の自由度も高まるだろう。用途にあわせてお店などで貸し出すこともしやすくなる。海の家では防水携帯、音楽が聴きたいところでは巨大なスピーカー付き携帯などレンタルビジネスも今とは違う広がりを見せるかも知れない。

また複数端末とは異なるが一部で実験研究されているものに携帯にジャケットを装着することで、機能を拡張できるような端末がある。Wi-Fiやブルートゥースなど無線カードなどをその場の環境に合わせて装着することで、ローカルのネットワークにも接続可能になる。これはPCとのコミュニケーションにも有効である。現在も一部サービス化されているが、携帯を認証用の鍵にすることができれば、マルチパーソナリティ時代にますます増える多数のサイトの異なるID管理という現在でも顕在化している非常に悩ましい問題の解決にも寄与できる。PCのセキュリティ向上にも役立つだろう。

SIMロックの制限解除は現在進行している総務省のモバイルビジネス研究会の報告書でも提言されており、今後具体的になる可能性が高い。現在の携帯キャリアのビジネスモデル的にはなかなかすぐに認めたくはない部分ではあるが、携帯市場全体のことを考えれば、端末の自由度を高めることが結果的には新しい市場創造の一番の近道だ。思わぬ利用用途などの発見につながり、通信サービス側でのアプリケーション開発にも寄与でき、収入増に繋がることが期待できるはずである。また国際的に弱い日本の携帯端末メーカーの活性化にも繋がる可能性もあるだろう。是非勇気ある決断を期待したいところである。

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プロフィール

D4DR株式会社代表取締役社長。コンサルタント。野村総合研究所で多くの企業のネットビジネス参入の支援コンサルティングを実施。マルチメディアグランプリ、オンラインショッピング大賞などの審査員。経済産業省産業構造審議会情報経済分科会委員。青山学院大学大学院エグゼクティブ MBA 非常勤講師。