デザイン・ビジュアライゼーションとは何か:その誕生の契機
2008年10月31日
ゲームやエンターテインメントの世界を中心として発展してきたCGの世界で、最近注目されているキーワードが、ビジネスシーンで高品質なCGを活用する「デザイン・ビジュアライゼーション」である。デザイン・ビジュアライゼーションとはいったい何なのか、またビジネスをどのように変えていくのだろうか。デザイン・ビジュアライゼーションの市場拡大を目指し、その活用を積極的に推進する長尾健作氏(株式会社パーチ)にお話をうかがった(全8回)。
──早速ですが、デザイン・ビジュアライゼーションというのはいったい何でしょう。映画やゲームで活用されているCGというのはすぐにイメージできるのですが、それを日常のビジネスシーンで利用するというと想像がなかなか難しいのですが。
長尾:まず最初にお伝えしておきたいのは、デザイン・ビジュアライゼーションは3DCGソフトを使った高品質でリアリティのあるCG全般をさすのですが、エンターテインメントではなくビジネスシーンで使うものだということです。
一言で定義すると、「デザイン・ビジュアライゼーションとは、CADで作られた設計データを元にして作成した、リアルなCG」であるといえるでしょう。もちろん背景のオブジェクなど、コンバートデータではなくCGソフトで一から作りこむ部分もありますが、核となるのはCADデータを元にしたCGであるということです。
──つまりそれは、設計ができて、実際に作る前に、完成品の形をシミュレートしてみるということですか?
長尾:そういう意味合いは大きいです。建築であればイラストや、外形の分かる模型を作りますし、商品でも外形が分かるような模型を作ります。しかし実際にものを作るというのはそれなりにコストも時間もかかります。そこをCGに置き換えていくことで時間を短縮し、コストを削減していきます。
──でも、CGでは、モノの質感が分からないんじゃないかと思うんです。
長尾:うーん、たしかに、素材によってはそういうこともありますね。パール素材のように角度によって色や光沢が変わるようなものや、しっとり感、冷たい感じ、ぬめり感といった、再現が難しいものも中にはあります。
でも、ほとんどは再現できますし、「実物を撮影した写真」とCGの差は、無いといっていいでしょう。CGですから実際に触ることはできませんが、触感や一部の特殊素材以外は、問題なく再現できるレベルです。
Image courtesy of With a Twist Studio
──確かにこれは、言われなければCGには見えませんね。
長尾:プロダクトの設計に3次元CADが使われるようになり、モデリングも画面上である程度はできるようになってきたのですが、どうしてもCADのデータでは質感が不十分だということで、「ハリウッド映画の質感を入れていこう」というのが最初の発想です。
海外では建築にも3次元CADがすでに普及していますので、建物の3次元データを作るだけではなく、素材や建物自体の環境負荷を考える、グリーンビルディングのシミュレーションツールとしても使われています。
Image courtesy of RED VERTEX - www.red-vertex.com
日本の場合は、建築分野ではまだ二次元CADが主流ですので、デザイン・ビジュアライゼーションについては、コンセプト段階でのイラストの代わりに、写真に近いリアルなイメージを伝えるための、コミュニケーションツールとして使われることが多いです。外装だけではなく、内装や家具のイメージもCGにすることで、実際にモデルルームを作らなくてもイメージが正確に伝わります。
──今、オートデスクでは、「Autodesk Visualization Contest 2008」が開催されていますが、こちらのサイトで紹介されている昨年度の入賞作品を見ると、建築関連の作品が多いですね。
長尾:そうですね。従来のビジネスシーンでのCGの利用といえば、やはり建物や周辺環境などのシーンを再現するものということで、建築分野での利用が多かったこともあり、応募も建築業界の方が多いのでそうなっています。
オートデスクとは、デジタル・ビジュアライゼーションの市場創造のために、パートナーとして協力しています。オートデスクでは、すでに広く普及しているAutoCADに加えて、CGのデファクトスタンダードとなっているMaya、3d Max、Infernoを製品ラインナップに加え、デザイン・ビジュアライゼーションを実現する統合環境を実現しています。
まもなくWeb上でも審査が開始されるようですので、楽しみにしています。
語り手プロフィール
長尾 健作
株式会社パーチ代表。大手制作会社でのデジタル化推進・ビジュアライゼーション事業の起ち上げに携わった後、起業。ビジュアライゼーション事業を推進する企業およびクリエイターのサポートを手がけると共に、市場創造のための講演活動を行っている。
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