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デザイン・ビジュアライゼーションが変えるマーケティング・ワークフロー

高品質CGのリアルな表現は、広告とプロダクトデザインをどう変えるのか。

解決する課題その1:プロダクトライフサイクルの短期化に対応する

2008年12月 4日

ゲームやエンターテインメントの世界を中心として発展してきたCGの世界で、最近注目されているキーワードが、ビジネスシーンで高品質なCGを活用する「デザイン・ビジュアライゼーション」である。デザイン・ビジュアライゼーションとはいったい何なのか、またビジネスをどのように変えていくのだろうか。デザイン・ビジュアライゼーションの市場拡大を目指し、その活用を積極的に推進する長尾健作氏(株式会社パーチ)にお話をうかがった(全8回)。

(第4回から続く)

──さまざまな場面で写真ではなくデジタル・ビジュアライゼーションを使う、ということに、どのようなメリットがあるのでしょうか。写真と変わらない品質のCGはすごいと思いますが「それだけなら、別に写真を撮ればいいじゃない」と思ったりもします。

長尾:大きなメリットは、写真の変わりにCGを使うことで、プロダクトライフサイクルの変化に対応できるということです。

──プロダクトライフサイクルの変化というのは、具体的にどういうことでしょう。

長尾:一言で言ってしまうと、商品寿命が短くなっているということです。最近の消費者は移り気ですから、売る側も次々と新しいものを出していかないと飽きられてしまいます。こうした状況の中で商品企画担当者の負担はどんどん増えていますから、製品開発のスケジュールがどうしても遅れがちになります。

開発スケジュールが遅れても発売時期は決まっていますから、広告宣伝用にビジュアルを用意しなくてはいけません。撮影用の製品を用意するよりは、写真をデジタル・ビジュアライゼーションに置き換えることで、同じ品質のビジュアルを、より短い期間で準備できます。

──なるほど、そこで時間を短縮することで、商品開発の遅れを吸収できるということですね。

長尾:また、プロモーションのやり方も最近は変わってきています。よくあるのが、新製品発表会と同じタイミングでスペシャルサイトを開設して商品情報を少しずつ見せていくという手法です。当然まだ現物は完成していないのですが、画像の公開は必要になります。そのために撮影用のモックアップを準備するよりは、CADの設計データからCGを制作する、デジタル・ビジュアライゼーションを利用する方が早いです。

──つまりより長期間のプロモーションが可能になると。

長尾:そうですね。ここまでの話を図にまとめてみるとこうなります。

製品開発の遅れで販促活動に遅れが生じるケース(上図)では、時間のかかる撮影用製品準備をCGに置き換えることで制作期間を短縮できます。また、写真をCGに置き換えることで短縮した時間をより多くの販促活動に利用することで、他社に比べて先に、より良い、より多くの販促活動を行うことが可能になります(下図)。

──なるほど。ところで、広告や販促活動以外にも、メリットはないんでしょうか。

長尾:商品の画像を使うのは広告だけではありません。例えば、商品企画の段階で、どんなカラーバリエーションを用意するかを決めるために、消費者調査をするようなケースを考えてみましょう。

写真を見せて意見を聞くわけですが、製品化するかどうかをまだ決めていない色の現物を作るのはコストも時間もかかります。あるいは、すでに色が決まっていても、自動車などは調査のためだけに何台も色違いで作るわけにもいかない。なので実際は、製品と色見本を見せて、「こういう製品にはどんなカラーバリエーションがあるといいと思いますか」といった聞き方になります。

でも、デジタル・ビジュアライゼーションなら、テクスチャマッピングのプロセスで違う色を指定して、異なる色のバリエーションの画像が簡単に作れます。

複数の色や形を商品企画段階の消費者調査で用意でき、消費者ニーズをより正確に把握することが出来ます。

──色見本で選ぶよりも、実際に色の異なる製品を見比べる方が、評価がしやすくなるでしょうね。通販で買い物する時に、カタログの写真と違う色のものを色見本を見て注文すると、頭の中で想像していたのとなんか違う、というのはよくあります。

長尾:CADデータを利用したデジタル・ビジュアライゼーションを使うメリットがもうひとつあって、設計データを基にしたCGだから、製品の中まで見せられるんです。例えば断面図や、部品を拡大した画像も作れます。

──プロモーションサイトを利用した商品紹介などには向いていますね。

長尾:そうですね。モックアップで外観以外の写真を撮影できるレベルのものを作るのに比べれば、手軽に多面的な見せ方ができます。

(第6回に続く)


語り手プロフィール

長尾 健作

株式会社パーチ代表。大手制作会社でのデジタル化推進・ビジュアライゼーション事業の起ち上げに携わった後、起業。ビジュアライゼーション事業を推進する企業およびクリエイターのサポートを手がけると共に、市場創造のための講演活動を行っている。
PERCH デザインビジュアライゼーション

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プロフィール

聞き手・板垣 朝子

WIRED VISION 編集委員。物理学を学び、システムコンサルタント見習いを経てライターとして独立。「技術と科学が社会をどう変え、ヒトをどう幸せにするのか」に関心を持つ。

オートデスクについて

設計(デザイン)およびデジタルコンテンツ制作、管理、配信に関わるソフトウェア分野で世界規模リーディングカンパニーとしてパワフルなテクノロジー製品とサービスを提供している。