映画『THE 4TH KIND フォース・カインド』:超常現象か、それとも…
2009年12月11日
MOTION PICTURE COPYRIGHT (C)2009 GOLD CIRCLE FILMS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
[ストーリー/プレス資料より]
アラスカ州ノーム。不眠者数300人以上。行方不明者数アラスカ州最多――。
アラスカ州北部の町ノームでは、これまで多数の住民が行方不明になってきた。2000年10月、ノーム在住の心理学者アビゲイル・タイラー博士のもとに、不眠症を訴える住民が次々に訪れる。不審に思ったタイラー博士は、催眠療法で彼らが眠れない理由を解明しようとした。そしてそこでカメラが捕えたのは、これまで誰も目にしたことのない映像だった……。
60年代以降FBIによる訪問が2000回を超えるというノーム。この映画は、65時間以上に渡る記録映像及び音声の抜粋と、その再現映像とで構成されている。なお、記録映像の一部には、かなり衝撃的な映像が含まれる。
タイトル(「第4種」という意味)を見ただけで「ああ、あの話ね」とピンと来る映画ファンも多いだろう。ただし、この作品は特定の先入観、決めつけで臨むと面白さが半減する。なのでこのレビューでも、『フォース・カインド』が具体的に何を扱っている映画なのかは触れずにおく。それでもまあ、予告編を見たり、公式サイトの情報を見るとおおよそ絞り込めてしまうけれど……。
超常現象、つまり既存の科学では説明のつかない現象としては、宇宙に関係する謎、超能力、霊的な存在などが挙げられ、目撃例や体験談が伝えられている。一方でこれらは科学の立場から、錯覚、偽証、思い込み、記憶の改変、精神疾患などによる事実誤認として説明されてきた。
映画の中で、心理学者、保安官、退行催眠を受けるノームの住民たちは、行方不明者や異常な事件について、何を信じ、何を疑うかで葛藤する。そして観客もまた、「記録映像」と再現映像で構成されるというこの映画が、真実を語っているのか、それとも凝った作りの虚構なのか、それぞれの価値観、信念で判断するよう求められる。
繰り返しになるが、判断は観客に委ねられているので、特定のジャンルに決めつけるべきでもない。それでもひとつの見方として、これを擬似ドキュメンタリーと位置づけると、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)に始まり、『REC/レック』(2007年)、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)、『パラノーマル・アクティビティ』(来年1月公開予定)といった具合に近年また増えている、ビデオカメラで撮影した映像を「事実」として構成するスタイルに、ひとひねり加えた(2画面分割による記録映像と再現映像の同期再生など)意欲作と言える。ストーリーを伝える媒体としての映画の機能に新しさを加える試みとして面白いし、映画に限らず、さまざまな媒体の「語りの手法」に関心のある人なら参考になるのではないか。
最後になるが、本作の日本独自のプロモーションでは、YouTubeに公式チャンネルを設け、 予告編に加えて、鳥居みゆきをナビゲーターに起用したオリジナル動画も何本か公開している。洋画の宣伝としては珍しく、バイラル動画に相当な予算を割いた取り組みとして紹介しておく。
[作品情報]
『THE 4TH KIND フォース・カインド』 原題:THE FOUTH KIND
12月18日(金)、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:オラトゥンデ・オスンサンミ
ナビゲーター/主演:ミラ・ジョヴォヴィッチ(ナビゲーター/アビゲイル・タイラー博士役)
出演:ウィル・パットン、イライアス・コーティーズ
公式サイト
[関連記事]
・謎の米軍施設『HAARP』:訪問レポート画像ギャラリー
・「宇宙人に誘拐された体験」を心理学的に分析
・「私は監視されている」:監視社会が生む新しい精神疾患
・真実は宇宙のかなたに
高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」
過去の記事
- 最後に、オススメの映画を何本か2011年5月31日
- 放射性廃棄物を巡る問いかけと印象的な映像:『100,000年後の安全』2011年4月15日
- マイケル・ムーアに原発問題を映画化してほしい2011年4月11日
- 震災と映画業界:公開延期と、「自粛解除」の兆し2011年3月29日
- 「SF系」、地味に現実へ浸食中2011年2月28日