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30分で理解できる!バーチャルドメインを使ったメールサーバ

2008年4月11日

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メールサーバの基本の基本 ~送信の「SMTP」と受信の「POP」

インターネットでもっとも活用されているアプリケーションといえば?・・・いわずもがな電子メールである。WWWが普及する前から使われており、初心者からベテランまで、利用者も圧倒的に多い。「電子メールがなければ仕事にならない」という人も多いだろう。もはやメールは、コミュニケーション手段の代表格として日常生活に溶け込んでいるといっても過言ではない。だからこそ、電子メールを実現している通信プロトコルというのは、WWWを実現するHTTPよりも簡単なのではないか、と思うかもしれない。ところが、必ずしもそうとはいえない面がある。なぜなら、到達管理、セキュリティ、スパムメール制御など、さまざまな管理要素があるからである。

メールサーバを構築する前に、電子メールを実現するための仕組みについてきちんと理解しておくのがいいだろう。電子メールの仕組みを理解するには、現実の郵便における配送ネットワーク上をイメージするのがもっとも適切なので、まずはそこから始めてみよう。

まず、郵便物を送るときの手順を思い浮かべていただきたい。ポストに投函して、宛先に届くまでの流れだ。手順を大きくわけると、基本的に次のような手順になる。

  1. 郵便局のポストへ郵便物を投函
  2. 郵便局は、郵便物を宛先に近い郵便局へ転送
  3. 宛先に近い郵便局から、宛先に配達

電子メールの場合、3のニュアンスが若干異なる。これだと、宛先つまり相手のメールボックスにメールが届くまでを思い浮かべると思うが、実際は郵便局内の私書箱に配達され保管されるという手順に近い。なので、以下のように表現を改めて進めよう。

  1. 宛先に近い郵便局の私書箱で保管

図1 郵便

メールの送信:SMTP

この手順をインターネット上で実現するのがSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)と言われる通信プロトコルだ。電子メールを転送するためのサーバはこの通信プロトコルにより連携して、電子メールを宛先まで届けている。実際にSMTPを実現するソフトウェアはMTA(Message Transfer Agent)と呼ばれ、これにより電子メールは宛先が所属するサーバへ転送される。転送されたメールはMDA (Mail Delivery Agent)というソフトウェアにより宛先のメールアドレスと対になるメールボックスに保管される。電子メールの世界では、メールアドレスは郵便での宛先に相当するものであり、ユーザ名とドメイン名を@でつなげることによりインターネット上で一意に定まるようになっている。

図2 インターネットメール

私たちを悩ませる迷惑メールは、このMTAを悪用し大量のメールを垂れ流しているが、こういった不正な送信にMTAを使われないようにするために、メール送信時に認証をする仕組みとしてSMTP-AUTH(SMTP Authentication)といったものもある。また、無線LANの普及により電子メールの内容が盗聴される危険性が高くなっているために、暗号化された通信路としてTLS/SSLを用いるSMTPs(SMTP over TLS/SSL)といった技術もある。

もっとも有名なMTAはsendmailというソフトウェアだが、最近はpostfixというMTAも人気があり、『SuitePRO V2』ではどちらでも選択できるようになっている。sendmailもpostfixもSMTPで通信を行うMTAであるためSMTPサーバとも呼ばれる。なお、postfixはMTAとMDAの機能をあわせ持っている。

メールの受信:POP

それでは次に、郵便局の私書箱に届いた郵便物を受け取ることを思い出してみよう。ユーザは郵便局まで行って私書箱から郵便物をまとめて取り出す必要がある。これも大きく3つに分けることができる。

  1. 近くの郵便局へ行く
  2. 私書箱を開く
  3. 郵便物を取り出す

図3 郵便物の受け取り

この図でいう郵便局はサーバであり、私書箱はメールボックスとなる。ユーザは、自分専用のメールボックスにアクセスし、メールを取り出す。電子メールのシステムでこの手順を実現するのによく使われているのがPOP(Post Office Protocol)という通信プロトコルで、ここで使われるサーバも「POPサーバ」となる。ユーザ(ローカルマシン)はPOPサーバへアクセスして、サーバのメールボックスからメールを取り出すことができるわけだ。

私書箱へのアクセスは当然そのユーザに限られるため、メールが保管されているサーバへはログインをする必要がある。サーバ上で直接メールを開いて読むこともできるが、それではネットワークに接続しているときにしかメールが読めない。このため、通常はローカルマシンへメールを持ってくることが多い。

図4 POPによるメールの取得

なおPOPでは、インターネット上をアカウント名とパスワードが平文で流れるため、セキュリティ上の問題がある。このため、先ほど述べたTLS/SSLによる暗号化された通信路でPOPを使うPOPs(POP over TLS/SSL)に加えて、パスワードが直接通信路上を流れない方法で認証を実現するAPOP(Authenticated Post Office Protocol)を使うこともある。また、メールをローカルマシンにダウンロードせずに、メールの管理をサーバ上でしてしまうIMAP(Internet Message Access Protocol)が使われることも多くなってきている。

メールの送受信のまとめ

ここまで解説してきたように、SMTPやPOPといった通信プロトコルを使うことで、ローカルマシンから電子メールの送受信ができる。この機能をローカルマシンで実現するソフトウェアをMUA(Mail User Agent)と呼ぶが、一般にはメーラーとかメールクライアントと言った方がわかりやすいだろう。

図5 電子メールの送受信

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増田(maskin)真樹

IT/NETリサーチャーを経て、ライターとして独立。多数の媒体で執筆活動後、米国シリコンバレーでガレージ起業に参画。帰国後、関心空間、nileport、ソニーblog、@cosmeなど多数のサービスに関与。