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増井俊之×LogMeIn

ユーザインタフェース研究の第一人者が、全世界利用実績7,000万台以上のリモートアクセスサービスを考察する。

第3回 LogMeInの応用(1)

2010年3月29日

(これまでの増井俊之×LogMeInはこちら

パソコンをインターネットに常時接続させている家庭が増えていますが、情報は家の外から中に流れるばかりで、家の中のパソコンに外からアクセスすることはできないのが普通でした。LogMeInを導入すると、ネット上のどこからでも家の中のパソコンにアクセスすることができるようになりますから、現在一般的なやり方と異なる方法でパソコンを活用できるようになります。

家のデータの活用

個人情報を含むファイルや大きなファイルは家の中のパソコンで管理するのが普通です。たとえば、家計簿は公開するものではありませんし、普通は外部からアクセスしたいものではありませんから、家の中でだけ編集/閲覧できれば充分です。デジカメ写真やムービーを大量に撮る人は、そのようなデータを持ち歩いたりネット上に置いたりするよりも家のパソコンに保存するのが普通でしょう。家計簿やデジカメ写真といったデータは個人にとって重要なものですが、ネットからは隔離された状況にあることになります。

クラウドコンピューティングの時代が近付いており、個人的な日記、メモ、名簿、メールのアーカイブなどをネット上に置くようにしている人も増えてはいますが、秘密にしておきたい個人的なデータや大きなデータは自宅のパソコンで管理するというのが現在のところ一般的なやり方です。自宅で管理したいような個人的なデータは増える一方です。

ScanSnapのような使いやすいスキャナがあれば領収書、手紙、パンフレットなどを簡単にパソコンに取り込むことができますし、書籍や漫画をスキャナで取り込む人も増えています。趣味や記録のために日常的にデジカメを使う人も増えていますし、人間のあらゆる行動をビデオなどで記録する「ライフログ」を実践する人まで出てきました。

このようなデータは個人的なものですし、サイズが大きくなるので、持ち歩いたりネット上に置いたりされることはあまりなく、自宅のパソコンで管理するのが妥当でしょう。このように「なんでもかんでも自宅のパソコンに放り込む」というトレンドは当分続くと思われます。

自宅のパソコン内のデータが充実してくると、このようなデータに外出先からアクセスしたくなることも多くなるでしょう。しかし、昔撮った写真を見たりスキャンされた資料を調べたりしようとしても、外部から自宅のパソコンにアクセスできなければ見ることはできません。

必要になるかもしれないデータは最初からすべてネット上に置いておけばいいのですが、秘密のデータをネット上に置くのは心配ですし、サーバを借りて大量のデータを置くには金がかかりますし、自前のサーバを用意するのは大きな手間がかかります。このような状況では、データは自宅のパソコンに格納しておき、LogMeInを使って必要なときだけ外部からアクセスできるようにするという方法は正しい選択といえるでしょう。

楽曲データや電子書籍など、自宅のパソコンで管理したいデータも今後ますます増えるでしょう。音楽プレーヤや電子書籍リーダの容量は限られているので、大量のデータ全部を常に持ち歩くことはできません。購入した電子書籍データはすべて自宅のファイルに保存しておき、適宜コピーして使うのがよさそうです。このように利用するには従来はかなりの技術と手間が必要でしたが、LogMeInを使えばほとんど苦労することなくこのようなことが可能になるわけです。

次回も、応用利用を考察していきます。

LogMeIn
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プロフィール

増井俊之

1959年生まれ。ユーザインタフェース研究。POBox、QuickML、本棚.orgなどのシステムを開発。ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、Apple Inc.など勤務を経て現在慶應義塾大学教授。著書に『インターフェイスの街角』などがある。

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