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増井俊之×LogMeIn

ユーザインタフェース研究の第一人者が、全世界利用実績7,000万台以上のリモートアクセスサービスを考察する。

第2回 LogMeInを使ってみる

2010年3月15日

(これまでの増井俊之×LogMeInはこちら

LogMeInは米LogMeIn社が開発したリモートデスクトップシステムで、「とにかく誰でもすぐに簡単に使える」ことが大きな特徴になっています。自宅のパソコンを外部から利用するためには、外部からの接続要求に自宅のパソコンが応答する必要がありますが、普通の方法でインターネットに接続している家庭では、セキュリティを考慮して

  1. 外部からの接続要求はパソコンに届かない
  2. 接続要求を受け付けるプログラムがパソコン上で動いていない

ようになっているのが普通であり、このままでは外出先から自宅のパソコンを操作することはできません。しかしLogMeInの提供するソフトウェアをインストールすると、自宅のパソコンとLogMeInのサーバとの間で接続状態が持続し、LogMeIn管理画面(マイコンピュータ画面)を経由して外部からの要求が自宅パソコンに伝えられるようになります。

外出先のノートパソコンから自宅パソコンを利用したい場合は、ノートパソコンのブラウザからLogMeIn管理画面にログインし自宅パソコンを指定することによって、ブラウザ上に自宅パソコン画面が表示されて利用可能になります。自宅パソコンにLogMeInのソフトウェアをインストールするだけで、どこからでも自宅パソコンにアクセスすることができるという手軽さはなかなか画期的です。

私の自宅のパソコンにLogMeInをインストールして、ノートパソコンのブラウザからアクセスしてみると、ブラウザ上に以下のような画面が表示されて操作可能になります。

iPhoneや各種PDAでは専用のクライアントソフトが用意されており、iPhoneのクライアントソフトを利用すると以下のような画面が表示されます。iPhoneから自宅パソコンを自由に操作できるというのは、かなり不思議な感覚です。

LogMeInを利用するまで、私はリモートデスクトップシステムを利用したことがなかったので、面白いものだとは理解していたものの、実際どれだけ有用なのかよくわかっていませんでした。

先日、ある論文をKindleDXで読もうと思ったのですが、その論文を自宅パソコンからKindleにコピーするのを忘れていたことに気付きました。普通ならあっさりあきらめるところですが、LogMeInが使えることを思い出しました。

KindleでPDFを読みたい場合、パソコンとKindleをUSB接続してデータを転送する方法が簡単なのですが、○○○@kindle.com という自分用アドレスにPDFデータをメールで送ることによって、3G回線経由でKindleにデータを送ることもできます。LogMeInを使って自宅パソコンを操作してPDFデータをメールで送ってみたところ、無事にKindleに転送され、論文を読むことができました。

LogMeInもKindleのサービスもネットワークを有効利用したものですが、様々なネットワークサービスの活用により応用が無限に広がる可能性を感じました。

ネット時代の安心感

これからのネットワーク社会では様々な安心感が重要になると思います。データが安全(Secure)だというS-安心感も重要ですが、データにいつでも(Anytime)どこでも(Anywhere)アクセスできるというA-安心感も重要です。

あらゆるデータをネットワーク上に置いた場合、A-安心感が得られるもののS-安心感は得られません。
あらゆるデータを自宅のパソコンに置いておけば、S-安心感が得られるもののA-安心感は得られません。

これらの両者を満足する方法はいろいろ考えられますが、個人的に重要なデータを自宅に置いておくことによってS-安心感を持ちつつ、LogMeInによってA-安心感も確保するというパソコン利用法は、インストールの簡単さや利便性を考えるとかなり妥当なものだと思います。

クラウドサービスに秘密のデータを預けるよりも、自宅のハードディスクを使って自分でバックアップする方が安心な感じがするでしょうし、自宅のデータにどこからでもアクセスできる保証があれば、忘れ物の心配が無いので気が楽になります。LogMeInのサービスはネット時代の安心感の確保にかなり有用ではないかと思っています。

次回以降は、LogMeInの様々な使い方を考えてみたいと思います。

LogMeIn
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プロフィール

増井俊之

1959年生まれ。ユーザインタフェース研究。POBox、QuickML、本棚.orgなどのシステムを開発。ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、Apple Inc.など勤務を経て現在慶應義塾大学教授。著書に『インターフェイスの街角』などがある。

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