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増井俊之×LogMeIn

ユーザインタフェース研究の第一人者が、全世界利用実績7,000万台以上のリモートアクセスサービスを考察する。

第6回 LogMeInをTVのリモコンにする

2010年5月10日

(これまでの増井俊之×LogMeInはこちら

第4回の記事では計算機操作に詳しくない人の家のパソコンをリモート操作する例を紹介しましたが、今回は自分の家のパソコンをLogMeInで便利に使う方法を紹介したいと思います。

私は自宅の居間のテレビにMac miniをHDMIケーブルで接続しており、動画や音楽を再生するのに利用しています。またMiglia TVMaxというTVチューナをUSBで接続しているので、アナログ放送のテレビ番組をMac miniで観ることもできるようになっています。

こういう使い方をするためにはAppleTVを使うのが一般的ですが、AppleTVではブラウザを使うことができませんし汎用性にも欠けるため、私はMac miniを利用しています。また、テレビから離れた場所からMac miniを操作できるようにワイヤレスキーボードとマウスを使っています。

この構成は結構強力だと思っていたのですが、実際に使ってみると、普通にパソコンを使う場合と比べ、居間のテレビの前でキーボードやマウスを使うことはあまり快適でないということがわかってきました。

キーボードやマウスは仕事机の上で使うときは便利なのですが、居間にあるような低い机の上で使おうとするとかなり前かがみな姿勢をとらなければならず、快適に操作することができません。キーボードやマウスは膝の上で使うことも難しいので、居間でくつろいだ姿勢でパソコンを使うことはかなり辛いことになります。このため、上図のような構成の機器を使いこなすためにはかなり気合いが必要であり、利用頻度がいまひとつ高くありませんでした。

一方、居間でテレビのニュースを聞きながらノートパソコンで作業するといったシチュエーションはよくありました。テレビのチャンネルや音量を変えるためにMac miniのキーボードやマウスを操作するのは面倒ですから、こういう場合はMac miniは使わず、普通のリモコンで普通にテレビを操作していました。せっかく強力な構成を用意したのにあまり活用できていないことは残念だと感じていました。

LogMeInによるリモコン操作

LogMeInを使うと、ノートパソコンで作業しながら別の場所にあるMac miniを遠隔操作できますから、ノートパソコンで完全にテレビの制御ができることになります。ノートパソコンのブラウザからLogMeIn経由でMac miniを操作することは簡単ですから、作業しながら無理なくテレビも操作することができます。

パソコンを使いながらテレビを見たいとき、パソコン上の小さなウィンドウにテレビ画面を表示するという方法もありますが、離れた場所の大型テレビを見る方がはるかに快適です。

テレビのリモコンにはボタンしかついてないのでメニュー操作すら簡単ではありませんが、進化したパソコンのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を利用すれば複雑な操作も簡単で、好きな動画や音楽を簡単に選んで再生させることができます。

テレビの前でマウスやキーボードを利用するのと、離れた場所のノートパソコンで操作するのはたいした違いが無いように思われますが、実際にやってみるとかなり違います。TVに接続されたパソコンをLogMeIn経由操作するという方法を使うことにより、くつろいだ姿勢で簡単な操作でテレビを操作することができることになりました。

家電製品の「リモコン」は「リモート」に家電製品を「コントロール」するという隔靴掻痒感が常に感じられるものです。テレビを遠方からリモコン操作することと目の前のパソコンでGUI操作する感覚の違いはかなり大きなものです。LogMeInを使って目の前のパソコンでリモートのテレビを利用できるようにするだけで、これまでのモヤモヤが解決してしまいました。

人間が機械を操作するのは人間の欲求を満たすためであり、操作そのものが目的ではありません。欲求を満たすために「リモート」に「コントロール」したり、機械のところまで移動したりするのは変な話です。今回紹介したような方法を使うと自分にとって快適な作業環境において機械をうまく使うことができるようになります。「リモコン」に対する考え方が変えるきっかけになるかもしれません。

LogMeIn
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プロフィール

増井俊之

1959年生まれ。ユーザインタフェース研究。POBox、QuickML、本棚.orgなどのシステムを開発。ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、Apple Inc.など勤務を経て現在慶應義塾大学教授。著書に『インターフェイスの街角』などがある。

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