震災によって高まった各種防災サービスの標準搭載への動き
2011年4月20日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論II」はこちら)
今回の東日本大震災で、あらためてケータイの重要さを再認識された方も多いことだろう。輻輳(ふくそう)により通話ができないことがどれほど心細かったか、あるいは家族と連絡が取れたことの喜びなど、日ごろ当たり前に使ってきたケータイが大きな心の支えになることを筆者も痛感した次第だ。
同時に震災を機にした、緊急事態に対応する各種サービスの見直しやサービス提供の前倒しなども多数見受けられた。
こうした災害時に確実に連絡を取る手段として、あらためて「災害用伝言板」の有効性を多くの方が認識されたはずだ。いくら電話をかけても輻輳で通じない、メールだと遅延してしまう。そんなときに確実にネット上にメッセージを残し、電話番号という個人IDをたよりに多くの方に参照してもらうことができる災害用伝言板。通信キャリアを超えて、電話番号で相手の安否を確認できるこのサービスは、3キャリアが共同で開発した画期的なものである。さらに、2010年3月1日からは各キャリアの災害用伝言板に登録されている安否情報を、キャリアを超えて横断的に検索する機能が追加されている。
ただし、NTTドコモとauに関しては、ケータイサイトが利用可能なフィーチャーフォンでなければこのサービスを使えないという弱点もあった。昨年からスマートフォンが急激な勢いでシェアを拡大しているが、残念ながらソフトバンクモバイル以外のスマートフォンはこの災害用伝言板に対応しておらず、スマートフォンユーザーは別の方法で安否情報を掲載するほかなかったのだ。
たまたまNTTドコモは、震災前の2月21日に、3月下旬を目標に災害用伝言板のスマートフォン対応を行うことを発表していた。まるで震災を予測でもしていたようなタイミングだが、実際に3月11日には大震災が発生し、スマートフォンユーザーにも災害用伝言板のニーズは一気に高まったはずだ。おそらくサービス提供計画を前倒しにして、3月18日午前6時からスマートフォンでも災害用伝言板の提供を開始している。また、auはさらに対応が早く3月16日23時から、Android OSを搭載した「IS01」「IS03」「REGZA Phone IS04」「IS05」でも災害用伝言板の提供を開始している。震災に対応した各社のいち早い動きは大いに評価したい。
災害用伝言板のスマートフォン対応が早かったソフトバンクモバイルだが、逆に緊急地震速報への対応は3キャリアの中で出遅れてしまった。各キャリアとも2007年から緊急地震速報を通知する機能を主要機種に搭載してきたが、ソフトバンクモバイルは831Nの1機種に留まっていた。しかし今回の震災を機に緊急地震速報の有用性があらためて問われ、今後発売する携帯電話およびスマートフォンへの機能搭載を標準化すると発表した。
緊急地震速報は、気象庁が中心となって提供する地震警報システムの一つで、ケータイの場合はパケット通信とは別に、放送を受信するのと同様な仕組みで警報を受信するものとなっており、一斉に多数のユーザーがケータイで速報を受けても輻輳などを起こさない画期的なものとなっている。スマートフォン向けには、iPhone用の「ゆれくるコール」や、Android OS用の「なまず速報」などアプリで提供されているが、これらはパケット通信を使っているので、速報配信時にネットワークに負荷をかけるのではないかとの懸念の声も出ていた。
しかし、前述のソフトバンクモバイルの緊急地震速報標準化の発表では、緊急地震速報に対応できないiPhone向けは「ゆれくるコール」の使用を推奨し、ソフトバンクモバイル自身がゆれくるコールの提供元であるアールシーソリューションに対してサーバ増強などの支援も行うことが盛り込まれている。通信キャリア自ら推奨するということで、一部ユーザーから懸念が出ていたパケット通信(アプリ)を使った緊急地震速報の利用についても、ネットワークの負荷をかけずに安心して利用できるというお墨付きがついたということだろう。
筆者のiPhoneも、「ゆれくるコール」の不気味な緊急地震速報アラームが連日鳴り響いている。
木暮祐一の「ケータイ開国論II」
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