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歩行リズムと健康(3) 歩行リズムとフラクタル性の関係

2007年9月21日

歩行のリズムも、実はフラクタルです。これについては、ボストンの研究グループがいち早く調査を行いました。

彼らが1999年10月13日の「Nature Bionews」に発表したその内容を、ちょっと紹介しましょう。

まず被験者の足首に、小型の記録装置をつけます。かかとなり、爪先なりが地面について加重がかかると、装置につながったパッドがシグナルを出し、次にまた足が着くまでの時間がモニターできるしくみです。

これで1時間ほど調べた結果、健常者の場合、一歩前進するのにかかる時間がフラクタルなパターンを示すことがわかりました。

つまり、健常者の歩数とステップ時間の関係を見てみると、一定してはいないけれどデタラメでもなく、1歩目・10歩目・100歩目・1000歩目……には、何らかの相関が見られたということです。

逆に、転倒するリスクの高い高齢者、症状の進んだパーキンソン病やハンチントン病などの脳疾患患者では、リズムが不規則になることもわかりました。

ちなみに、歩みの安定しない幼児の歩行も同様にフラクタル性が低いのですが、10代後半になって成熟に近づくと、フラクタル性は向上します。

研究リーダーのハウスドルフ(Hausdorff)によると、フラクタル性の低下、「フラクタル性の崩壊」の程度と病気の重度とは、ほぼ一致しているそうです。

この実験に使った歩行監視システムには、それほどコストがかかりません。

これが実用段階に入れば、医師は重大な病気の兆候を、歩行リズムのわずかな「フラクタル性の崩壊」から察知できるようになるかもしれない。記事はそう締めくくられています。

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米山 満 (三菱化学科学技術研究センター)

1959年神奈川生まれ。1985年東京大学理学系修士課程(物理学専攻)修了 同年三菱化成株式会社入社。

現在、株式会社三菱化学科学技術研究センター基盤技術研究所にて、生体リズムの非線形解析に従事。

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