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クリエイティブになるための準備体操(1) 「つくる」をめぐる大きなループ

2007年8月 3日

世界最高のデザイン会社と言われるIDEOの秘密を描いた「発想する会社!」(早川書房刊)には……

「アイディアは頭の中で考えているだけではダメで、それを形にしてみると気づくことがある。さらにそれを他の人の目にさらして、いろんな 反応をもらうことで、さらに気づくことがある」

……ということが繰り返し述べられています。

こうした指摘を受けると、すぐに「『考えて、つくる』の繰り返しが大事だ」とか「『考える』と『つくる』の活動ループをとにかく回すことだ」とまとめてしまいがちです。

しかし、考えたものを実際に「つくる」のはそんなに簡単なことではありません。

そこで、ホンモノを作る前にモデルを作って代用したりします。ちょうど子どもがペットボトルをロケットに見立てて「ごっこ」遊びをするようなものですね。ここでは見立てる力をうまく使い、その気になってみることが大事です。

もう少し簡易なやり方は、スケッチなどを描いて、あたかもそれが本当 に実現したらどのようなことが起こるかをいろんな角度から考えてみることです。この場合は、いかに多くの人の想像力を刺激し、気づきを誘発するドキュメントを作るかが重要になります。

もうひとつ気をつけておきたいのは、「考える」という行為は他とは切り離されてぽつんとあるわけではない、ということです。

たとえば、私たちは常日頃からいろんなモノ・コトの意味を読みとって取り入れています。よりよく「考える」ということは、こうしたストックとの間に関係を見つけ、新しいコトバにすることでもあります。

このように「考える」の手前には「読む」が、「つくる」の先には 「発表する(見せる)」が、そのさらに先にはそれを見た人と「話す」が……というように、社会的なつながりが広がっているのです。

そして、こうした他との関係の中で自分とは異なる視点から気づきを得る、それこそがアイディアに新たな次元を与えるきっかけとなる、そういう枠組みに自分をおいていたいと思います。

クリエイティブな力を活性化するためには、部分に力を注ぐだけでなく、それを含む大きなループを見渡しながら「気づき」を得てジャンプしていくことが重要なのです。


imaizumi01.jpg 講師:今泉洋 (武蔵野美術大学デザイン情報学科教授)

1951年生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒。在学中より雑誌ライターとして音楽評論などを行い、卒業後、NHK-FMで音楽番組などを手がける。

1981年株式会社アスキーに入社。ニューヨーク駐在員、雑誌創刊企画、ハイテクラボ、海外書籍編集、パソコン通信サービス「アスキーネット」運営、インタラクティブソフト事業部などを経て1993年にコンサルタントとして独立。

家電、情報機器メーカーの研究所などで情報関連分野の研究プロジェクト、新製品開発に参画。1999年、武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科創設とともに着任、現在に至る。

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