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合原亮一の「電脳自然生活」

環境問題から生き方まで、地球ととことん付き合う方法論を模索する。

iPadの何が世界を変え得るのか–何が足りないのか (2)

2010年6月24日

(1)から続く

○まだ重過ぎるiPad

また取り巻いている誰が手に取っても、その人に合わせてソフトキーボードが現れるので、そのまま入力出来る。ただ、手に持って入力するには、今のiPadでは重過ぎる。片手で持って1本指で入力することも、両手で縦に持って、両親指で入力することも出来るのだが、いずれの場合でも長時間の入力は難しい。iPadが重すぎるのだ。

入力ツールではなくブラウジングツールとして考えても、重さの問題は残る。電車の中で立って使うにはそれほど重さを感じないが、寝転がって片手で支えるにはやはり重すぎるのだ。子供にはさらに重く感じられるだろう。

普及には軽量化は避けて通れない課題に感じられる。ただ技術的にはそれほど簡単ではない。誰でも使うことを目指すと、それなりの強度が必要だ。強度を上げると重くなるのが普通だ。カーボン/カーボン・コンポジットのような、軽量で強度の高い材料は一般に高価だからだ。多くの人向けの製品に使うにはかなりのコストダウンが必要になる。

○必要なハードウェアと機能の最適化

また誰が使っても使いやすくするには、デバイス側の処理を増やす必要がある。それにはMPUの強化が必要だが、消費電力が増える。駆動時間を維持しようとすると、そうでなくても重量のかなりの部分を占めるバッテリーがさらに大型化する危険がある。

もちろん、より消費電力が低いMPU、よりエネルギー密度の高いバッテリー、より消費電力の低いディスプレイ、より洗練されたOS、より必要な機能のみに特化したアプリケーションなどによって、軽量かつ高機能なデバイスが実現出来る可能性が無いわけではないが、技術的にはかなりのチャレンジだ。現実的には、現在使える技術を組み合わせ、機能や設計を最適化していくことになるだろう。

○ユーザーインターフェースをどうするか

そこで問題になるのが、何が「最適」か、という命題だ。例えばユーザーインターフェース。iPadのユーザーインターフェースはMac OSとはかなり違い、戸惑うことが多い。しかしiPhoneユーザーに聞くと、基本的なインターフェースは同じで迷わないそうだ。

本質的に重要なのは、どちらも使ったことが無いユーザーに最適か、ということだろう。それには、現実世界の経験から類推できるインターフェースでなければならない。また初めてのユーザーは、最初はおっかなびっくり使うだろう。それでもそれなりに使えて、混乱しないものでなければならない。

なぜなら、この段階でアレルギーが出来てしまうと、2度と使わなくなってしまうからだ。そう考えると、ゆっくり使う方が確実な操作をしやすいiPadのインターフェースは、それなりの指向を持っていることがわかる。ただ今のところ充分なものとは言えないし、各アプリに共有されているとも言えない。これはインターフェースがまだ試行錯誤の段階ということだろう。

○パソコンを越える機能

現在のiPadでも、GPSや加速度センサー、コンパスなどを搭載している。今後もカメラなど、新機能が搭載されていくだろう。こうした機能が共通で標準であることが重要だと思うが、第1世代の製品に完成度を求めるのは酷というものだろう。

Wi-FiモデルにはGPSが搭載されていないことを問題視する意見もあるようだが、少なくとも都会では、Wi-Fiのアクセスポイント情報を基にかなり高精度の位置情報を得ることができる。現在のiPadはほぼ同じ基本機能を持っていると考えて良いようだ。

コミュニケーションデバイスであろうとすると、パーソナライズが必ずしも良いとは限らなくなる。その辺りの線引きをどうするかも、今後の課題になりそうだ。

○とりあえずのまとめ

僕なりの一面的な見方ではあるが、iPadをヒントに、次世代のデバイスに必要な要件を考えてみた。ここで簡単に整理しておくと、おぼろげではあるが以下の条件が必要なようだ。iPadがどこまで達成しているか、皆さんの判断を聞かせて欲しいところだ。

・常にネット接続されている
・コミュニケーションの中心になる機能
・軽量で丈夫なこと
・初めてでもある程度直感的に利用出来ること
・ユーザーを拒絶しない共通のユーザーインターフェース
・ユーザーごとに最適な利用をサポートする機能
・必要最小限に最適化された機能
・共通の使い勝手

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プロフィール

川崎重工業人事部・川重米国本社CFOを経てガリレオに参加。ガリレオの業務の傍ら、環境問題、食糧問題に関心を持ち、「電脳自然生活」を目指して有機農業で米、野菜を作る。

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