このサイトは、2011年6月まで http://wiredvision.jp/ で公開されていたWIRED VISIONのコンテンツをアーカイブとして公開しているサイトです。

増井俊之の「界面潮流」

「界面」=「インタフェース」。ユーザインタフェース研究の第一人者が、ユビキタス社会やインターフェース技術の動向を読み解く。

第27回 なぞなぞ伏字

2008年11月21日

(これまでの増井俊之の「界面潮流」はこちら

公開すると問題があるかもしれない名前などを「」のような「伏字」にしたいことがあります。そもそも何も公開しなければいいのかもしれませんが、友人などにだけわかる形で情報を公開したいこともあります。このような場合、伏字を解読する方法を用意しておけば、隠れたメッセージを友人などにだけ公開することができるようになります。

このような解読可能な伏字を利用すると、以下のようなブログを書くことができます。

昨日の酒屋でという酒を売ってるのを発見した。とても美味い酒なのだが売ってる店が少なく、これまででしか売ってるのを見たことがなかったのだが、このような便利な場所にある店でも買えるようになったのはありがたい。

これでは何が何だかわかりませんが、実は上の伏字は、左から順番に4個の「■」をクリックして解錠すると、内容が表示されるようになっています。このような秘密の解読シーケンスを登録できるようにしておくことにより、酒を買って嬉しかったことは公開しつつ、具体的な店や酒の名前は友人以外に秘密にしておくことができます。

店の名前を隠すのはちょっとセコい感じがしますが、クイズ問題の答を別ページに書くかわりに伏字にしておくような使い方もできます。以下のようなトリビアの伏字では、一番左の「■」をクリックすると答が表示されます。

・3次方程式の解法で虚数の概念を導入したのはである。
・「東海道五十三次」で有名な歌川広重の本職はだった。

ネタバレ部分を伏字にしておいて、クリックした人だけ読めるようにするといった使い方もできるでしょう。

なぞなぞ伏字の作成と利用

このような伏字を登録して利用することができるfuseji.comというサービスを作ってみました。以下のような画面で伏字のID、伏字の中身、解読シーケンスを登録しておくことにより、wiredsample1のようなIDをもつHTMLタグを使って前述のような伏字を利用することができます。

伏字の活用

「ソ●ー」のような無意味な伏字はネット上にあふれていますが、伏字が有効に利用されている例は少ないようです。しかし隠したい情報と解読方法を柔軟に制御できれば、いろいろな認証やゲームに利用できそうです。

トランプの「神経衰弱」は一種の伏字解読ゲームですし、私が運営する「四文字熟語クイズ」でも伏字がうまく利用されています。四文字熟語クイズサイトにアクセスすると、以下のような問題が沢山出題されます。

この答は「無学文盲」ですが、「文学」とか「文字」とかいう単語に影響され、なかなか正答がわからないものです。伏字の中身を想像すると心の奥底が露呈することがありますし、新しい発想が生まれる可能性もあるでしょう。伏字にはまだまだ意外な応用があるかもしれません。

フィードを登録する

前の記事

次の記事

増井俊之の「界面潮流」

プロフィール

1959年生まれ。ユーザインタフェース研究。POBox、QuickML、本棚.orgなどのシステムを開発。ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、Apple Inc.など勤務を経て現在慶應義塾大学教授。著書に『インターフェイスの街角』などがある。

過去の記事

月間アーカイブ