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デザイン・テクノロジーによるサステナビリティの実現

信頼される企業に必須のサステナビリティ。デザイン・テクノロジーを活用したサステナビリティの実現について解説

サステイナブルな未来に思いを巡らせる

2009年3月 2日

「本ブログで示されたコンテンツや意見は執筆陣によるものであり、必ずしもオートデスクの見解と一致するものではありません」


図1:デザイン案のサステイナビリティに関する影響を理解するための照明、日照解析ツールAutodesk® Ecotect (オートデスク エコテクト)™

デザインの喜びとは、未来を想像し、まだ存在しないより良い新世界の物語を語ることだ。

われわれはデザインするとき、より良い世界に向かっていくという楽観主義から、世界はどう変化すべきか示唆を与えるようなビジョンを導いていく。われわれは建築、設計、施工の専門家として、エキサイティングな責任を担っている。それは、ビジョンをどのように構築し、美しい形に仕上げ、最終的に現実にするか、という課題に答えを出すことだ。建築やインフラの設計では、非言語的な問題を考察し、非言語的な解決策を導き出する。デザインを考えるプロセスは視覚的かつ動的であり、このプロセスにテクノロジを用いることで、われわれは視覚化シミュレーションの強力なツールを得た。デザイナーが社会の最も困難な責任に取り組む上で、こうしたツールはどのような助けになるのだろう?


図2:米グリーンビルディング協会の評価システム『エネルギーと環境に配慮した設計のリーダーシップ』(LEED)が定めるサステイナブル デザインの要素を考察

日々のニュースでも、デザイン会議の議題でも、サステイナブル デザインは真っ先に取り上げられる。それは人と環境、経済に対する尊重の上に成り立つ。サステイナブル デザインを行なうことはすなわち、われわれの後を継ぐ世代の暮らしを危険にさらさない場所こそが良い世界だ、というビジョンを明確にすることだ。サステナビリティに配慮してデザインすることは、真っ当にデザインすることと同義だ。将来のあらゆる建設活動でサステイナブル デザインが要件になる、という意見もある。

サステイナブル デザインに取り組む設計者のアイデアへのあこがれを、現実へのビジョンに転換するその過程で中核を担うのは、コミュニケーションだ。アイデアが次第に具体化するに従い、その視覚化とシミュレーションが必要になる。デザイナーはコンセプトから詳細設計までの各段階で、提案と検討を繰り返し、要件を満たしているかどうかを評価する。美しさ、性能、コストといったさまざまな要素が各段階で検討される。デザインの進行とともに次々と決定が下され、選択肢が消える一方で、新たな選択肢が現れる。デザインを伝達する能力、すなわち、提案されている内容を視覚化しシミュレートする能力は、デザイナーが最良の選択を行なうのに役立つ最良の情報を提供するものでなければならない。


図3:サステイナブルなプロジェクトを参考資料として検討する

われわれはまた、コミュニケーションに頼って、こうしたビジョンの物語を他者に伝える。伝える相手は、プロジェクトを承認し使用する施主、プロジェクトを支えることになる地元の住民、プロジェクトが社会のニーズに合致するかどうかを見極める政策決定者、プロジェクトに融資する銀行、工事を担当する施工業者などだ。視覚化とシミュレーションは、こうしたコミュニケーションを成功に導く鍵となる。

われわれは現在、著しい集中化を経験している。われわれが生きるこの時代は、サステイナブル デザインがもはや無視できない急務となり、テクノロジのおかげで、以前は想像もできなかった驚異的に強力な方法によりビジョンを描き伝達することが可能になっている。

建築や設計の専門家は過去、図面や模型といった伝統的な視覚化の手法でアイデアをまとめ、伝えてきた。アイデアの核心を言葉や線、影で図面に表現し、板や木、石膏で模型を作ってきたのだ。このように図面や模型を抽象化したおかげで、人々は最も重要な要素に集中し、デザインに組み込まれたアイデアを理解できた。


図4:デザインのVRML形式のモデル。エネルギー シミュレーション サービス Autodesk® Green Building Studio®

時は流れ、コンピューターが進化して高性能化し、それを活用できる業種が拡大した。それとともに、現代のデザインプロセスも進化して コンピューターの性能を利用できるようになった。デザインという仕事は、伝統的なプロセスから、コンピューターを多用するCADなどの形に置き換えられた。今日、「BIM(ビム):ビルディング インフォメーション モデリング」は、3次元パラメーターの要素で視覚化の力をさらに拡大している。これらのパラメーター要素は、実世界の形状を、各要素の特性を追跡するのに必要な情報に結びつけている。ジオメトリ ベースの形状とリンクした情報の強力な結びつきは、サステイナブル デザインにとって極めて重要だ。

こうしたテクノロジの進歩と時を同じくして、環境に優しいデザインが重視され、それが社会にとって重要であることを皆が認める時代が到来した。日本建築学会はサステイナブル デザインを次のように定義している。「以下のように設計されたものを持続可能な建物と呼ぶ。[1]ライフサイクルを通じて、エネルギーや資源を節約し、材料をリサイクルして、有害物質の放出を最小限に抑える。[2]地域の気候や文化、伝統、周囲の環境と調和する。[3]地域と世界それぞれのレベルで生態系を維持する一方で、人の生活の質を持続し改善することができる」

デザイナーがサステイナブル デザインを解釈する1つの手段が、世界中のコミュニティーに採用が広がっている、サステイナブルな建物の評価システムだ。日本グリーンビルディング協会や日本サステナブル・ビルディング・コンソーシアム(JSBC)などの組織が、サステイナブル デザインの手法に関する知識や意識を高めようと取り組んでいる。中でも、JSBCは『建築物総合環境性能評価システム』(CASBEE)という重要な基準を開発している。CASBEEには、屋内環境やサービスの質、屋外環境、エネルギー、資源、材料、周辺環境の評価が含まれている。

視覚化とシミュレーションによる抽象化という新たなアプローチは、強力なツールをデザイナーにもたらし、これにより、施主やCASBEEのような評価システムがサステイナブルなプロジェクトに求める要件を満たせるようになった。たとえば、CASBEEの新築に関する評価ツールで要件を満たすべく、熱負荷を減らすための基準をクリアしていることを実証する必要があるとしよう。この場合、屋内の空間を視覚化し、日時を指定して日光の影響を調べることも可能だ。その際、人工の光を使わずに済むか、温度が上昇し過ぎないかといったことも検討できる。


図5:日中の採光をAutodesk® Ecotect ™で調査する

シミュレーションは、ダイナミックなプロセスの抽象化を通じて、正確な理解をもたらす。ある意味、これは科学と定量評価、現代のコンピューター技術が結びついて進歩した結果だ。25年ほど前は、米Cray Research社[現Cray社]の「重い鉄の塊」のようなスーパーコンピューターを使うしかなかった。これは天気予報や防衛のシステムにも利用されていたもので、映画業界向けの特殊効果用アニメーションを使い、シミュレーションを生成していたのだ。それが今では、パソコンで数値流体力学を用い、オフィスでの熱気と冷気の流れを再現すれば、その空間が快適かどうかを判断できる。気候に関するデータを用い、その場所に建物を造った場合の影響をシミュレートすることも可能だ。特定の空間と日照の年間を通じた関係を調べたり、暖房と冷房による負荷の予想図を見ることも可能だろう。

そうした結果、われわれはアイデアをデザインの中に具現化するようになった。デザインを抽象化し、視覚化やシミュレーションを使って再現するようになった。この再現を基に、デザインが予想通りに機能するか、要件を満たすかといったことについて、調査方法を確立し、評価と判断を下せるようになった。

この段階において分析は重要な概念であり、BIMの力に結びついている。われわれはデザインを、外形と情報の両方を備えたモデルとして再現しているため、分析ツールで自らの判断の影響を予測できる。エネルギーに関するモデルを作れば、完成した建物の機能を調査するのに役立つ。エネルギーに関するモデルを作ることは、サステイナブルな建物の評価システムの多くで鍵を握る要素となっている。また、エネルギーに関するモデルを分析可能にすることは、当社のデザインのパフォーマンスを予測するうえで極めて重要なステップとなっている。


図6:Autodesk® Green Building Studio®でエネルギーの最終用途を分析

われわれは今朝、仮想世界『Second Life』に行き、『Autodesk Island』でプレゼンを見た。その後、デザイングッズや家具などが充実した店に「テレポート」すると、プレハブ住宅が売られていた。リンデンドルで購入すれば、仮想世界に所有する土地に設置できる。視覚化とシミュレーションによって進化を続ける能力が、いかに仮想世界やビデオゲーム、映画の特殊効果といった豊かな想像力をもたらしたかを目にすることは、デザイナーにとって刺激的な体験だ。そして、現実の世界に戻れば、同じ視覚化とシミュレーションが、炭素が過剰に排出される未来から世界を救うという途方もない難題に立ち向かう助けとなり、後世のために真のサステイナビリティを実現するのに役立つという事実に、やはり興奮を覚えるのである。


図7:美しさを視覚化し性能を分析することは、優れたサステイナブル デザインにつながる

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設計(デザイン)およびデジタルコンテンツ制作、管理、配信に関わるソフトウェア分野で世界規模リーディングカンパニーとしてパワフルなテクノロジー製品とサービスを提供している。

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