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西堀弥恵の「テクノロジーがもたらす快適な暮らし」

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法廷通訳を介した初めての裁判員裁判 謝罪の言葉は?

2009年9月 9日

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法廷通訳を介する初めての裁判員裁判が9月8日、さいたま地方裁判所で始まりました。

強盗致傷罪で起訴された被告の男性はフィリピン国籍起訴状の内容は、去年12月、他の少年と共謀の上で、通りがかりの男性2人に暴行を加え、現金やパソコンなどを奪った、というものです。

筆者も仕事柄、傍聴することにしました。

初公判だから、冒頭手続きの罪状認否で被告が発言する機会があるはず。
被告の言葉が通訳を介して裁判員にどう届けられるかに興味津々です。

毎日新聞社の記事によると、金城学院大学の水野真木子教授は「同じ謝罪の言葉でも『許してください』と『申し訳ありません』では、反省の深さの伝わり方が異なる。裁判の信頼性にかかわるので、慎重に通訳すべきだ」と指摘したとのこと。

なるほど、なるほど、よし、否認事件ではなさそうだから、謝罪の通訳に注目しよう!


裁判が始まりました。

滞りなく手続きは進み、証言台に呼ばれた被告に対して裁判長から黙秘権の告知があって、午後1時42分、とうとう来た、罪状認否。

裁判長 「被告人、何か言いたいことはありますか?」
被告人 「(略)すみませんでした」

筆者は耳を疑いました。

え、今、確かー、全部日本語で言いましたよね。


・・・ ・・・


「すみません」って。

・・・はっきりと。

そして被告本人の罪状認否はあっけなく終わりました。
椅子から転げ落ちそうになりながらも、続く裁判長の言葉に耳を傾けました。
どうしても日本語でしか言えないとき以外は、母国語で話すように、とのこと。

そうか、カタコトの日本語では、意図していない内容が伝わってしまう恐れがあるのか。


しかし、大阪大学グローバルコラボレーションセンターの津田守教授は、共同通信社が元となるBREITBARTの記事で「私たちは外国で、誰かに『アリガトウ』と言われたら嬉しく感じる」と指摘しています。法廷で被告人が日本語を使用したとき、たとえそれがカタコトだとしても、裁判員の受け取り方に影響が出る可能性がある、というのです。確かに。

2008年、米国の上院は、英語を十分に理解できない、もしくは話せない人をサポートするため、2008年から2012年会計年度までに州裁判所に対して毎年、1500万ドル(2009年9月9日現在、約13億8000万円)の助成金を認めました。その金額には、法廷通訳人の養成や資格制度の充実、報酬などの費用が含まれています。

様々な人種、国籍の人が入り混じる、いわゆるグローバル化が進む昨今、法廷で証言する者が母国語の使用に徹するべきなのかどうなのかについては、議論・研究の余地は残されているようです。また、日本の裁判所では、裁判員制度導入に従って、元の言語と同じだけ裁判員に訴えかける語学力、表現力、公平性などを兼ね備えた法廷通訳人の育成やその確保の問題がより浮き彫りとなる可能性があり、政府の関連予算配分の見直しや法整備は急務のようですね。

この裁判、9月11日の判決まで毎日続きます。証人尋問、被告人尋問と、まだまだ見どころは盛りだくさんです。

>上司へ
私がいないと思ったら、さいたま地方裁判所にいるかもしれませんよ(^-^)

※画像は日本の法廷ではありません。

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プロフィール

NTTグループ会社の社長秘書を務めた後、ガリレオの日英翻訳に参加。子供の頃の趣味はオルゴールを分解しては組み立て直すこと。仕事で携わっている京都新聞の記事翻訳がきっかけで日本の伝統文化に興味を抱き、自らも「座禅」や「書」に傾倒する。一方、溝口恵美子氏に師事し、ニューヨークのハーレムでセッションに加わるなど、ジャズシンガーとしても勉強中。