プロフィール

藤元健太郎(ふじもと けんたろう)

D4DR株式会社代表取締役社長。コンサルタント。野村総合研究所で多くの企業のネットビジネス参入の支援コンサルティングを実施。マルチメディアグランプリ、オンラインショッピング大賞などの審査員。経済産業省産業構造審議会情報経済分科会委員。青山学院大学大学院エグゼクティブ MBA 非常勤講師。


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藤元健太郎の「フロントライン・ビズ」

コンサルタントとしての豊富な経験をもとに、ITビジネスの最先端の動向を、根本から捉え直す。


2007年10月16日 11:00

第9回 ラジオと道州制と地域メディア

(これまでの藤元健太郎の「フロントライン・ビズ」はこちら

■もがくラジオ

前回は新聞の話をしたがラジオも深刻である。広告収入は6年連続で低下しており、リスナーのラジオ離れも急速に進んでいる。

かつて深夜放送を中心に若者向けメディアの側面もあったラジオであるが、1980年頃をピークに減少をはじめ、10代は95年に9%だった利用率はすでに2005年では4%まで減少している。深夜ラジオのハガキ投稿は自分の好きなコミュニティで、自分の書いたことが情報発信され、共有されるという意味で、現在のブログ、SNSなどのCGMの役割を担っていたが、その役割はいまや完全にネットメディアに移行しているのだろう。さらにラジオにとってもうひとつの重要な利用シーンとしては車の中というものがあった。しかし昨今はipodのようなデバイスを車に持ち込むことも増え、車の中もラジオの活躍するシーンは減少している。

希望の星はポッドキャスティングとラジオのながら視聴と防災利用である。すでにポッドキャスティングを利用しているラジオ局は多く、良質な番組コンテンツを電波に限らずネットで公開することでコンテンツの価値を広めようと考えている。またラジオの利用は仕事しながらとか、勉強しながら聴けるという意味で、動画のように意識を集中している必要が無いため、ネットとの相性がよいとも言える。J-waveなどは放送中の曲をネットでリアルタイムで知ることができるツールバーを提供していたり、イギリスのUBCmediaなどはラジオで流れた曲をそのまますぐに購入できるようなサービスもスタートしている。今後オークションのようにリアルタイムで共有した方が面白いネットサービスなどはラジオで実況中継することで臨場感を高めたりなどメディアミックスの面白さがあると言えるだろう。またいつもではないが防災時のように停電している状況でもラジオは重要な役割を果たすだろう。しかし、ビジネス的な厳しさをこれらがカバーするかどうかは難しく、他のメディアミックスを含め大きく業態が多角的に変化することは間違いないのではないかと考えられる。

■ローカルメディアと道州制

このようにラジオが厳しい状況を迎える中で、現在の免許制度による県単位の地方の小さいラジオ局の経営が今後も成り立つようになるかは早期の判断が求められるだろう。特に地方においては最初は地元の強力な資本家が地方新聞からスタートし、テレビもラジオも含めて総合地域密着メディアとして成長してきたという歴史をたどってきているところも多い。このため再編成などの改革を受け入れにくい土壌があるが、ある程度生き残りが予想されるテレビでさえも2011年の地上波デジタル移行はローカル局にとっては投資負担は重く、完全アナログ波停止が本当に行われるかは疑問も出てきている。こうした地方メディアにとってこのまま厳しい状況を迎え、倒産があいつぐような事態は地方経済にとっても避けなければいけない。それを解決するためにもひとつの大きなトリガーが現在政府でも真面目に検討されている道州制ではないかと考えられる。

道州制が地方メディアに与える影響は大きいだろう。現在の日本のように発達した交通網や通信網が整備され、成熟した市場において現在の県の単位は経済活動としては中途半端なサイズである。中央政府が権限委譲するとしても小さく、かといって地域密着のきめ細かいサービスレベルを考えるとそちらのほうは現在の市町村単位で行うことが望ましい。その意味でも米国などと同じように県という単位を再編成して、州政府のように権限を委譲したある一定規模の固まりを作り、防衛や外交などの中央政府と産業の固まりとしての州政府、住民サービスの地方自治体という3層構造が望ましい。

道州制のメリットはよく語られるように、EUの一カ国分くらいの経済規模のまとまりになれば、国際的に通用する経済圏として機能するため、例えば日本一にはなれないが「九州で一番の会社」を目指すモチベーションには高いものがあるだろう。それは九州で一番であればそれなりに世界でも戦えるスケールを持っている企業になるということでもあるからである。

このように権限がある程度委譲されるとすると(ここが行われるかどうかが日本の政治力が問われるところだが)州都は重要な文化・行政・経済活動の拠点になることが予想され、その道州の情報発信メディアとして州都ではキー局のような存在が重要になり、州に密着したメディアが誕生することになるであろう。電波状況やインフラ整備の状況なども地域毎に特性があるわけで、全国一律のモデルから道州の事情を踏まえた電波利用やインフラ整備が進むことも予想され、その場合も地域のメディアは各道州で異なる成長の仕方を行うことになるだろう。

こうした道州制に向けた動きはマスメディアだけでなく、他の業種にも影響を与えている。すでに地銀の再編などは始まっており、九州では福岡銀行と西日本シティ銀行の2強が県域を越えて競争を始まっているが、これも道州制になった時に九州の中心銀行になるための戦いと言われている。

ラジオ、テレビは現在の免許は県域免許であるために再編については道州制を前提とした法改正が必要になるが、マスメディア集中排除原則で資本的な自由が高まれば、現在のCATVのように資本的に全国のCATVを集約するようなプレーヤーも登場すると考えられ、2011年に向けて道州制の動きとともに地域メディアの再構築はいよいよ待ったなしだ。

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